排水処理センター
1.沿革
山口大学排水処理センターは,排水の総括管理とその貯留・処理,排水・廃液処理施設等の
維持管理,排水処理に関する調査・研究,教職員・学生に対する教育訓練,水質検査等を業務
として,1983年(昭和58)3月8日に発足した。
以下,発足までの経緯および発足後今日までの経過を記す。
(1) センター発足まで
吉田キャンパスへの統合移転が半ば完了した1971年(昭和46)9月,学長の諮問に応じ本学の
環境汚染等の防止に関する事項を調査審議する委員会として環境汚染等防止対策委員会が発足
した。同委員会(委員長:医学部野瀬善勝教授)は1973年(昭和48)9月,(1)排水処理の基本方
針,(2)排水処理計画,(3)特殊廃水処理施設,(4)特殊廃水処理要項および廃棄有機溶剤処理要
項,(5)暫定措置,(6)予算措置その他の6項目からなる「山口大学の排水処理について」を中
村正二郎学長に答申した。この答申に沿って1974年度(昭和49)以降,本学の排水・廃液処理施
設が順次整備されてきた。
廃棄有機溶剤は学内貯留と処理専門業者による外部委託処理をすることとし,1974年度(昭和
49)に吉田,常盤,小串の3地区それぞれにそのための集積場を整備した。カドミウム,シア
ン,六価クロム,水銀等の有害物質を含む特殊廃水は,中和凝集沈殿法と活性炭・キレート樹
脂吸着法を組み合わせて処理することとし,1975年度(昭和50)に全学をその対象として吉田地
区に特殊廃水処理施設(水和酸化第二鉄共沈法)を建設した。また,生活排水関連施設について
は,吉田,常盤,小串の3地区で個別に整備を進めた。常盤地区および小串地区は共に公共下
水道整備地域内であるため,構内排水管路を雨水排水と生活系排水の2系統に分流し,生活系
排水は公共下水道に排出するものとして計画し,常盤地区では1975年度(昭和50)に,また,小
串地区では1978年度(昭和53)に管路の敷設と公共下水道接続を完了した。吉田地区について
は,構内排水管路を雨水排水,生活系排水および実験系洗浄排水の3系統の分流方式とし,
1977年度(昭和52)に生活系排水管路の一部敷設と生活排水処理施設(活性汚泥法)の建設を行
い,翌1978年度(昭和53)には実験系洗浄排水の自動検水と手動処理のための実験排水処理施設
を建設すると共に構内全域の排水管路を敷設した。この間,1977年(昭和52)2月から暫定内規
により,施設の管理責任者として施設部長が,取り扱い責任者に環境汚染等防止対策委員会委
員長(工学部中西弘教授)がそれぞれ当たることとなった。
特殊廃水と生活排水の両施設が整備されるに及び,新たに規則の制定,関連規則等の見直し
が必要となった。1978年(昭和53)5月,小西俊造学長は環境汚染等防止対策委員会に構内排水
処理に関する総括的諸規則の案作りを諮問し,併せて施設運営の責任を全学的協力の下で担当
する体制を整備するよう要望された。1979年(昭和54)8月の同委員会答申を受け,1979年(昭和
54)10月に排水処理規則,排水処理施設管理運営委員会規則等が制定された。各学部長,教養部
長,病院長,図書館長,短大主事並びに事務局長から成る排水処理施設管理運営委員会が1980
年(昭和55)2月に開催され,農・工両学部長がそれぞれ正・副委員長に就任,排水処理施設の
管理運営に関する事項の審議とその実施に当たることとなった。
中山清次排水処理施設管理運営委員長は1980年(昭和55)11月,同運営委員会内の専門委員会
に「取扱主任者」として化学系教官を採用する場合の問題点とその対策について諮問した。同
専門委員会は1980年(昭和55)12月,(1)排水処理施設を教育・研究の一施設として位置づける,
(2)取扱主任者に指導・助言し,協力する組織が必要であり,そのために「センター」を設ける
ことが望ましいと答申した。排水処理施設管理運営委員会,環境汚染等防止対策委員会双方の
正・副委員長と学長,事務局長,施設部との懇談(1982年(昭和57)4月)を経て,1982年(昭和
57)7月に小西俊造学長が環境汚染等防止対策委員会(委員長:理学部林謙次郎教授)に「セン
ター構想」と関連規則の見直しを諮問した。同委員会は1982年(昭和57)12月に答申を出し,そ
れを受けて1983年(昭和58)3月8日に排水処理センターが発足した。
2) センター発足後
初代センター長に理学部林謙次郎教授が選任された。1983年(昭和58)5月1日,唯一の専任
スタッフであるセンター主任に猪股茂博助手が着任し,センターは稼働状態に入った。
吉田地区生活排水の活性汚泥処理を毎日の業務とし,年数回の廃棄有機溶剤および写真廃液
の回収・業者引き渡し,特殊廃水の回収と委託業者による処理,下水道および公共水域への放
流水の水質検査(外部委託)を定期的な業務とした。
通常業務の傍ら1983年(昭和58)7月,吉田地区構内および周辺水域(九田川)の水試料約60検
体についておよそ10項目の水質調査を理学部分析化学研究室と共同で行った。この種の調査
は,吉田地区の生活排水が公共下水道へ接続される1996年(平成8)までほぼ年1回のペースで
継続され,計10回行われた。
1984年度(昭和59)には,排水処理センター運営委員会が『廃液処理の手びき』の出版(11月)
および「ガラス器具の洗浄」についての実態アンケート調査(10〜11月)を行った。また,1985
年度(昭和60)にまたがり処理施設の余剰汚泥中の重金属含量調査も実施した。
1985年(昭和60)12月,広報誌『山口大学環境保全』第1号が運営委員会内の広報誌編集委員
会により発行された。広報誌の発行継続について,「創刊号の編集に際して,“このような山
口大学の自然環境全体を扱わざるを得ないような冊子の発行主体としては,排水処理センター
運営委員会よりも,より広範な問題を対象としている環境汚染等防止対策委員会の方が適切で
あろう”との意見が出され,編集委員一同の共感を得た。しかし,運営委員会の意向により,
今回までは運営委員会より刊行することとなった。」(第2号編集後記),「環境保全の問題
は,単に学内の問題にとどまらず人類共通の課題である。…。大気汚染,廃棄物処理の問題,
更には学内の快適な環境の創造,アメニティ性の追求等やらねばならない仕事が多い。こう考
えてみると,広報誌“環境保全”の編集の仕事も責任が重い。なお,環境保全全般を取り扱う
本誌の性格からみて,その編集は排水処理センター運営委員会の仕事の範囲を超えているとい
う意見があるが,…引き受けざるを得ない事情もあり,第3号の発行を当編集委員会で行っ
た。」(第3号編集後記)とあるように,毎号議論になりながらも毎年継続され,現在第13号
(1997年(平成9)12月)まで発行されている。
1985年(昭和60)9月末日をもって猪股助手が辞職された。その後任に藤原勇助手が1986年
(昭和61)4月1日付けで採用され,今日までセンター主任を務められている。この間,1993年
(平成5)5月から1994年(平成6)2月までの10ヶ月間,文部省内地研究員として九州大学で研
さんを積まれた。
センター発足時から3期6年間の任期を終えた林教授に代わり,1989年(平成元)3月,農学
部徳力幹彦教授がセンター長に就任された。また,待望久しかった技官の定員配置が実現し,
1991年(平成3)4月に前田康孝技官が採用された。
この頃のセンターが抱えていた問題の一つは,停電時に生活排水処理施設の地下室にある原
水槽から屋上の処理槽へ排水をポンプアップできないことであった。長時間にわたり停電する
と,地下の原水槽が溢れ,地下室は水浸しとなる。1991年(平成3)には台風19号により吉田地
区が3日間の停電に見まわれた。自家発電機をリースし,どうにか急場をしのいだ。その後,
揚水ポンプ用電源を2系統に増設し,電源トラブルに対する備えを講じた。
もう一つ,実験排水処理施設(モニター室)の機能不足問題を抱えていた。実験排水処理施設
でpH,水銀,クロムをモニターしてはいても,異常水の一時貯留ができず,したがって具体的
な処置がとれないことである。この問題は,1994年度(平成6)の実験排水モニター室の改修で
解決された。モニター項目をpHのみとし,pHに異常が見られた排水は,有害重金属イオンも含
むものとみなし,自動的にキレート樹脂処理を行い重金属イオンを吸着除去し,その後中和処
理を施す方式となった。
不用薬品をなんとかしてほしいという要請を受け,センターの業務外の仕事ではあるが,
1990年度(平成2)に不用薬品リスト調査を行い,当事者間での不用薬品交換のための情報を提
供した。また,1992年度(平成4)には,大学内に分散保存されていたPCBを排水処理センター
用地内に一括保存した。その後,環境汚染等防止対策委員会答申を受け,1995年(平成7)7月
排水処理センター規則の一部改正が行われ,不用薬品(固形物を含む)の調査および学内斡旋が
センター業務に追加された。1996年度(平成8)に学内LANが利用可能となり,インターネット
上に排水処理センターのホームページを開設し,不用薬品の情報を公開している。なお,不用
薬品以外にも『山口大学環境保全』や『廃液処理の手びき』等をホームページに掲載し,イン
ターネットを活用した広報活動も展開している。
1990年(平成2)に有害金属等を含む廃棄有機溶剤の業者引き取りが中止され,以後,排出者
は有害金属除去の前処理を余儀なくされた。また,1992年度(平成4)は,特殊廃水の処理作業
を請け負う業者が見つからず,センター職員自身による自前処理を余儀なくされた。1994年
(平成6)6月,水質汚濁防止法施行令の一部改正があり,放流水の水質基準に有害物質13項目
が追加された。このことへの対応策の一つとして,有機塩素系物質の回収量に関するアンケー
ト調査をこの年度に実施した。
1994年度(平成6)に特殊廃水処理装置が更新となり,新しくフェライト法による無機系廃液
処理装置が設置された。処理方式の変更に伴い,廃液の区分も変更された。新しい処理法にお
いては,水銀廃液の厳密な区別が必要なため,新装置での最初の操業時に廃液中の水銀検査を
実施した(1995年(平成7)3月)。その結果,水銀廃液以外の廃液タンクから水銀が検出され,
多くの労力と費用をかけて水銀の処理が行われることとなった。また,廃液タンクからの水銀
検出が,“環境へ放出された”とも受け取られかねない表現で新聞報道され,一時期その対応
にも追われることとなった。運営委員会は1996年(平成8)12月,『廃液処理の手びき』の改訂
版を発行し,新処理方式に対応した廃液区分の徹底等をはかった。
1996年(平成8)6月,吉田地区の生活排水が山口市の公共下水道へ接続され,これをもって
自前の活性汚泥処理は終りとなった。
全国の国立大学,国立研究機関,高等工業専門学校が参加し,廃棄物処理施設における処理
技術や管理運営の諸問題に関する情報交換,検討の場として大学等廃棄物処理施設協議会が組
織されている。この協議会は,1979年(昭和54)11月に発足した国立大学廃液処理施設連絡会が
1983年(昭和59)4月に発展的に改称したものである。山口大学はこの連絡会に当初から参加し
ており,センター発足後はセンター職員が毎年開催される協議会の総会や分科会に出席し,情
報交換や研修に努めている。
2.センター概要
(1) 体制
排水処理の管理体制は図1のようになっている。
(2) 運営委員会
排水処理センターの円滑な運営を図るため具体的事項を審議する。排水処理センター発足以
来の運営委員は以下の通りである。なおセンター長が委員長となる。
排水処理センター長 林 謙次郎 1983. 3. 8〜1989. 3. 7
徳力 幹彦 1989. 3. 8〜1997. 3. 7
佐々木義明 1997. 3. 8〜現在
人文学部 小川 全夫 1983. 3. 8〜1985. 3. 7
奥津 聖 1985. 3. 8〜1989. 3. 7
佐々木 衛 1989. 3. 8〜1993. 3. 7
豊澤 一 1993. 3. 8〜現在
教育学部 斉藤 正彦 1983. 3. 8〜1983. 9.21
右田 耕人 1983. 9.22〜1992. 3.31
村上 清文 1992. 4. 1〜1995. 3. 7
和泉 研二 1995. 3. 8〜現在
経済学部 高取 健郎 1983. 3. 8〜1996. 6.31
植村 高久 1996. 7. 1〜現在
理学部 佐々木義明 1983. 3. 8〜1985. 3. 7
1989. 3. 8〜1991. 3. 7
白木 敬一 1985. 3. 8〜1987. 3. 7
1991. 3. 8〜1993. 3. 7
三戸 信人 1987. 3. 8〜1989. 3. 7
江口 亨 1993. 3. 8〜1995. 3. 7
田頭 昭二 1995. 3. 8〜1997. 3. 7
宮田雄一郎 1997. 3. 8〜現在
医学部 酒井 恒美 1983. 3. 8〜1985. 3. 7
百々 栄徳 1985. 3. 8〜1992. 3.31
芳原 達也 1992. 4. 1〜1993. 3. 7
1995. 3. 8〜現在
原田 規章 1993. 3. 8〜1995. 3. 7
工学部 高須 芳雄 1983. 3. 8〜1985. 3. 7
中西 弘 1985. 3. 8〜1991. 3. 7
浮田 正夫 1991. 3. 8〜現在
農学部 宇都宮 宏 1983. 3. 8〜1985. 3. 7
勝本 謙 1985. 3. 8〜1987. 3. 7
丸本 卓哉 1987. 3. 8〜1989. 3. 7
萬場 光一 1989. 3. 8〜1991. 3. 7
進藤 晴夫 1991. 3. 8〜1993. 3. 7
岩田 祐之 1993. 3. 8〜1995. 3. 7
西山 雅也 1995. 3. 8〜1997. 3. 7
前田 健 1997. 3. 8〜現在
教養部 中間碩一郎 1983. 3. 8〜1985. 5.31
西口 毅 1985. 6. 1〜1991. 5.31
谷口 仁 1991. 6. 1〜1993. 5.31
青島 均 1993. 6. 1〜1996. 3.31
附属病院 宮地 隆興 1983. 3. 8〜1989. 3.31
栗本 晋二 1989. 4. 1〜1993. 3. 7
神谷 晃 1993. 3. 8〜現在
医療短大 山本 邦光 1983. 3. 8〜1993. 3. 7
右田たい子 1993. 3. 8〜現在
工短大 矢田部俊一 1983. 3. 8〜1985. 3. 7
松崎 浩司 1985. 3. 8〜1989. 3. 7
大石 勉 1989. 3. 8〜1991. 3. 7
センター主任 藤原 勇 1991. 3. 8〜現在
(1991年3月からセンター主任も運営委員のメンバーに加えられた。)
(3) センター職員
センター長(併) 林 謙次郎 1983. 3. 8〜1989. 3. 7
徳力 幹彦 1989. 3. 8〜1997. 3. 7
佐々木義明 1997. 3. 8〜現在
センター主任 猪俣 茂博 1983. 5. 1〜1985. 9.30
藤原 勇 1986. 4. 1〜現在
センター技官 前田 康孝 1991. 4. 1〜現在
(4) 建物平面図
無機系廃液処理施設および実験排水モニター室の建物平面図を図2に示す。
(5) 教育広報活動
・『廃液処理の手引き』発行:1984年11月,1990年3月(再配布),1996年12月(改訂版)
・広報誌『山口大学環境保全』発行:No.1(1985年12月創刊)〜No.13(1997年12月)
・ホームページの開設:排水処理センターもホームページを開設して,センターの紹
介,雑誌『山口大学環境保全』の閲覧,『廃液処理の手びき』の閲覧を行っている。
アドレスは http://www.sv.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~haisui/index_j.html
・見学会:排水処理センターでは希望者に処理施設の見学会,廃液処理の説明を随時
行っている。
(6) 装置(主な分析装置)
1.原子吸光光度計(日立 308型)
2.水銀分析装置(日本インスツルメント RA-2C型)
3.LC-IR分析装置(ニコレ Avatar360型)
4.イオンクロマトグラフ(ヨコガワ IC7000RS型)
(7) 図書
化学物質環境分析手法 環境計量実務便覧 危険物関係法令実例集
分析化学便覧 化学便覧 試薬工業JIS要覧
公害関係法規総覧(中国・四国編)
3.廃液処理システムの概要
(1) 全体の概要
山口大学の排水処理システムについて図3に示す。山口大学では,研究や学生実験で発生す
る廃液を処理の関係から無機系廃液,有機系廃液,写真廃液の3種類に大別し,さらに分類手
順にしたがって細かく分類されている。これらの方法で分類した後,無機系廃液は無機系廃液
処理施設において処理され,有機系廃液,写真廃液は業者に処理処分を委託している。また,
構内における排水用配管は,吉田地区では雨水,生活排水(水洗便所,トイレ,食堂)および
実験排水の3系統に管路が分かれている。生活排水は1978年(昭和53)から1996年(平成8)5月
まで生活排水処理施設で処理した後,九田川へ放流されていた。その後は処理することなく公
共下水道に放流している。実験排水は実験排水モニター室で水質を監視した後,生活排水とと
もに公共下水道へ放流されている。常盤,小串の両地区においては雨水,生活排水・実験排水
の2系統に管路が分かれていて,生活排水・実験排水は公共下水道へ放流されている。
(2) 無機系廃液の処理
無機系廃液はフェライト法を基本にして処理されている。フェライト法とは,マグネタイト
の結晶格子の中に重金属を閉じ込めることにより,廃液中から重金属を除去する方法である。
しかし,すべての廃液が同一条件でフェライト処理できる訳ではない。安定したフェライト処
理を行うため,廃液を6系統に分けて分別・回収を行っている。水銀,シアン,フッ素・リン
およびフッ素・リン・重金属廃液についてはそれぞれ個別の前処理を行った後,フェライト法
による最終処理が行われる。無機系廃液処理の全体のシステムを図4に示す。
個別の処理方法は以下の通りである。
A.重金属廃液の処理
廃液中に,2価の鉄イオンを混合し,アルカリを加えると次の反応によって重金属およ
び鉄の混合水酸化物の沈殿が生成する。
?
この混合水酸化物は水溶液中で加熱,空気酸化を行うことにより,再溶解,酸化,晶析を
経て最終的に次式の反応によってフェライトが生成する。
こうして廃液中の重金属イオンがスピネルフェライトの中に組み込まれ閉じ込められる。
B.水銀廃液の処理
廃液に含まれる有機水銀をまず酸化分解工程で無機水銀イオンに分解し,その後,無機水
銀イオンをキレート樹脂塔で吸着除去する。
?
C.シアン廃液の処理
シアンイオンは次亜塩素酸による分解処理を行う。分解反応は2段階の工程で進む。
D.フッ素・リン廃液およびフッ素・リン・重金属廃液の処理
フッ素およびリンは,塩化カルシウムを加えて難溶性のリン酸カルシウムおよびフッ化
カルシウムにした後,固形物として分離し取り除く。
E.特定廃液の処理
特定廃液は本学では処理できないため,学外に持ち出し業者委託処理となる。
(3) 実験排水モニターシステム
吉田地区には実験排水モニター室が設けられており,有害薬品や廃液などを入れた後の容器
の3回目以降のすすぎ液および実験器具の洗浄水など実験室からの排水を監視した後,下水道
に放流している。常盤地区および小串地区にはこのような施設はなく将来はモニター施設を設
置していく予定である。
実験排水モニターのフローを図5に示す。排水の監視機構は次のようになっている。モニ
ター室に流れ込んだ排水はまず原水槽に入る。そこから原水ポンプにより汲み上げられた排水
についてpHが測定される。もしpH値に異常がなければ,排水はそのままモニター室を通過し下
水道へ放流される。一方,pH値に異常が認められた場合には,排水が重金属イオン等の有害物
質を含むものとみなし,排水は貯留槽に貯えられた上で有害物質の除去処理を自動的に受け
る。まず,薬注ポンプが始動し硫酸または苛性ソーダが加えられ,排水のpHが調整される。次
いで,排水はポンプにより汲み上げられ,浮遊物を取り除くカートリッジフィルターを通過
し,活性炭および金属キレート樹脂塔へと導入され,そこで有害物質が吸着除去される。除去
処理後,排水は中和槽で再びpH調整を受けてから公共下水道へ放流される。
(4) 廃液回収実績
年度別回収量集計を図6に,また,1997年度(平成9)回収量の学部別内訳を図7にそれぞれ
示す。廃液量については無機系廃液および写真廃液はほぼ一定量の廃液が発生しているが,有
機系廃液量は毎年増加している傾向がある。