14.実験洗浄排水処理施設の底質並びに生活排水処理施設の余剰汚泥の中の重金属含量

理学部 分析化学・無機化学研究室

排水処理センター

 吉田地区における実験系講座からの研究並びに学生実験に伴って排出される「洗浄排水」(用いたガラス器具等の2回目迄の洗浄液は「流し」に流してはならない)は専用の管路を通して実験洗浄排水処理施設に導かれる。ここに,導入水並びに排出水のpHや六価クロム及び水銀の濃度を監視する自動観測装置が設置されており,導入水に規制値を越える異伏が認められると直ちに排水路系が遮断され,相当する処理装置が稼動してこれを無害化することになっている。異状の認められない洗浄排水あるいは処理後無害化された排水は生活排水路管に継がれて生活排水と共に生活排水処理施設に導かれる。

 実験洗浄処理施設に設けられている処理水槽(排水は全てこの水槽を通る)中には約4Gと見積られる量の沈積物がある。多価陽イオンの多くはケイ酸塩鉱物や水和金属酸化物などの固体酸化物に吸着されることはよく知られているところである。それ故,処理水槽中の底質に含まれる重金属イオンの濃度を知ることは,洗浄排水への対処あるいは器具洗浄の在り方を考える上で有益な示唆を与えると共に,九田川汚染の有無を知る上で有用な資料となると考えられる。

 そこで実験洗浄排水処理施設の底質並びに大学近くの九田川5地点の底質(1984年度)及び生活排水処理施設における余剰汚泥について,7〜8種の金属含量を調べてみた。

 用いた試料は施設及び九田川の底質については,採取した底質を漏紙上で風乾,120メッシュ以下のもの約5Kである。余剰汚泥については風乾後,乳鉢を用いて粉砕したものを試料とした。

 分析方法は,鉄(。)をMIBK抽出法で分離したのち,それぞれについてJIS K0102により原子吸光光度法を用いて定量した。

 得られた結果を表1に示す。

 洗浄排水処理施設の底質や生活排水処理施設の余剰汚泥の中の重金属類は,大学より上手の九田川底質中のそれより高い含量を示しているように見える。学内の底質や余剰汚泥中の重金属含量についての十分な情報は未だ得てはいないが,表1のデータを用いて濃度相関マトリックス法により,大学が九田川底質を汚染しているかどうかを検討してみた。結果は表2に示す通りで,現在のところ大学は九田川底質に影響を与えているとする明確な証拠は見出せなかった。しかし,大学排水口附近における九田川底質に二・三金属の濃度が高くなっていることは今後も注目していく必要があろう。