「編集後記」
今年は悲報が二つ届きました。初代排水処理センター長の林健次郎先生と、経済学部選出運営委員の高取健郎先生がおなくなりになりました。林先生は,排水処理センターを創設された方であり,本誌『環境保全』創刊も、先生のご尽力の賜物とうかがっております。排水処理センターが如何にあるべきかについての先生のお考えは、第1・3・4号等にうかがうことができます。先人の初志を大切に受け継ぎたいものと考えます。高取先生は,ご自身、何度も本誌にご寄稿くださいました。また、ゼミの学生諸君に寄稿をおすすめくださり、本誌を環境問題教育に積極的にご利用いただいておりました。また、経済学部を超えた文系の立場から,排水処理・環境保全の問題について,有益なご考察とご批判とをいただきました。お二方の温顔に再び接することができないことを、とても残念に存じます。ご冥福をお祈りいたします。
排水処理センターでは,昨年の水銀混入事件以後,ようやく無機系廃液の水銀濃度の測定が定着しつつあります。水銀用以外のポリタンクへの水銀混入は,件数は少なくなったものの,いまだに観測されています。処理する際には、依然として気が抜けない現状です。不用薬品の調査斡旋については,排水処理センターが最近学内ランに接続されましたから,これから活動開始といったところでしょう。また,吉田キャンパスの生活排水は,やっと公共下水道に接続されました。
環境問題は,排水や廃液のみにかかわるわけではありません。廃棄物も、当然、重要な問題です。大学内では、この問題についていまだに十分な対策が講じられていないのではないでしょうか。環境等汚染防止対策委員会の活性化が期待されます。
今回10年ぶりに廃液の手引きが改訂されました。廃液の新処理システムに即して作成されました。これをご覧いただければ,排水処理センターの活動,廃液の処理システムも、よくご理解いただけるものと存じます。
排水処理センターの業務内容は曲がり角に立っています。環境を守るための仕事は,依然として増え続けています。ただ、当センターの原点は「排水・廃液」ですから、排水・廃液を厳しく監視し続け、万が一、有害物質が垂れ流されたり、混入したりした場合には、適切かつ有効な改善を求めなくてはなりません。その具体策は運営委員会でも徐々に考えられています。ともあれ、「どの研究室が出したかわからない」、あるいは「何故混入したのかわからない」といった事態を、追究することなく放置していては、学問的誠実さが問われますし、監視機構は「隠れ蓑」に堕しかねないのだ、という点を銘記すべきでしょう。
この夏に日本中を騒然とさせたO-157についてもご寄稿いただきました。その感染原因は判然としないものの、学校給食制度そのものが問題をはらみ、事を増幅しているのかもしれません。給食制度は、貧しい戦後日本の子供たちの栄養状態を改善することに、何ほどかは寄与したはずです。筆者などもその恩恵に浴しております。しかし、戦後半世紀、学校給食を支える周囲の産業体制を、さらには、給食制度それ自体の功罪を、考えなおしてみるべきではないでしょうか。学校給食のみならず、食生活全般の様式とその環境について、再考を促す警鐘なのではないでしょうか。
今号は、学長はご多忙とのことで、残念ながらご寄稿いただけませんでしたことを付記いたします。