1.巻頭言  センター長就任のご挨拶

                       排水処理センター長 佐々木義明

 林謙次郎先生(1983.3〜1989.3),徳力幹彦先生(1989.3〜1997.3)が歴代センター長として長年にわたり悪戦苦闘されながら維持・発展させてこられた排水処理センターを引き受けることになりました。既に多くの難問が解決済みですが,それでもなお,いろいろの課題が残っています。微力ですが,誠意を持って職責を果たしたいと思っております。どうぞ宜しくお願いいたします。

 私は,林謙次郎先生の研究室の一員でありましたので,センター設立へ向けての準備段階から設立後先生が定年退官なさるまで,先生を通じて,外野席からセンターを眺めてきました。1期2年間,排水処理センター運営委員としての関わりもありました。また,センターの設立時に,センター助手の研究環境を理学部が支援することとなり,歴代の助手の方,猪俣さん(初代)および藤原さん(現),と林研究室で一緒に過ごしてきました。農学部の徳力先生がセンター長に就任される際にも,理学部の支援が継続されることとなり,今日まで同様の関係が藤原さんとの間で続いております。

 私の所属する研究室の専門分野が分析化学ということもあり,長年にわたり,年度のはじめに吉田キャンパス内外の水質分析(一般項目)を研究室総出(十数名)で行ってきました。水質を知ること以外にも,学生のトレーニングや研究室の和をはかることなど,いろいろな目的をもって実施してきました。センター発足後は,センターと共同でこの水質分析を行ってきました。

 こうした経緯から,排水処理センターは私にとって比較的身近な存在でありました。しかし,排水処理や環境保全について特別の見識があるわけではありません。今後いろいろお教え下さいますようお願いいたします。

 排水処理センターでは,実験廃液に関し酸・塩基の中和処理,無機系・有機系・写真廃液の分別収集,重金属の混在する有機系廃液の前処理などなど,多くのことを皆さまに強いております。研究条件の面からみますと,時間・労力・費用の負担となり,少しも有り難くないことだといえましょう。しかし,皆さまの段階での前処理や分別収集が,その後の廃液処理にとって決定的に重要です。今後ともご協力をお願いいたします。

 残念なことに,公共下水道入口で採水した排水から基準値を越える規制物質が検出されたり,吉田地区実験排水モニターに異常値が観測される事例が後を絶ちません。実験室排水になお一層の注意を払われますようお願いいたします。

 ここ数年,排水処理センター運営委員会では,“大学から一切の環境汚染物質を排出すべきではない”との理念に基づき,使用済乾電池・蛍光灯(水銀)や焼却炉(ダイオキシン)など“廃液”以外の事柄についても活発な意見交換が行われています。しかし,この課題は当運営委員会の手に余るものです。しかるべき場において検討されることを強く期待しています。

 対策が急がれる汚染物質の一つ,ダイオキシンについて一言触れたいと思います。ベトナムにおいて新生児の3割にも及ぶ奇形児が生まれた原因が,ベトナム戦争で使用された枯れ葉剤に含まれていた微量のダイオキシンにあったことはあまりにも有名です。日本のダイオキシン汚染度は,既に“世界のトップレベル”に達している,といわれます。欧米より十年遅れで,一定規模以上の焼却施設などに対する排出規制が,97年12月から始まります。山口大学にも規制の対象となる焼却炉があります。文部省は,小中高の焼却炉を全廃する方針を打ち出しました。しかし,大気中ダイオキシン濃度への都市ごみ焼却場からの寄与率は全体の1割にも満たない,というある県庁所在地に関する調査結果もあります。塩素化合物を排除するごみの分別収集や家庭用焼却炉を含めたもっと広範な発生源についての対策が早晩求められることでしょう。山口大学でも積極的・自主的な検討・対策が重要だと思われます。

 最後に,排水処理センター業務へのご理解とご協力を重ねてお願いいたします。