環境共生工学独立専攻の発足
工学部 中川浩二、浮田正夫
環境共生工学独立専攻は、理工学研究科の下に、本年平成10年4月より、従来の専攻とは異なり、学部の学科とは直接つながらない独立した専攻として発足した。学生定員は博士前期課程30名、博士後期課程13名である。
講座構成は表1に示すように、基幹講座として循環環境工学および安全環境工学の2講座(5研究分野)、協力講座としてバイオ循環工学および共生環境化学工学の2講座(2研究分野)、連携研究所1からなる組織である。
パンフレットによれば、環境共生とは、人類は環境の一部であるとの認識に立ち、全体としてそれを守り育て、また、他の生き物達とともに生きていける環境を創造することであるとし、
環境共生工学(Symbiotic Environmental SystemEngineering)とは、次世代において、共生、低負荷、人間尊重の理念による持続可能社会を創造するために、エネルギー・物質循環と、安全な環境の形成技術を研究するための学問であるとしている。
また、専攻の特色として
1)次世代の持続的発展を担う人材の養成
2)システム工学的視点、政策的視点、地球規模的視点からの学際的研究
3)学外との協力体制による先端的教育・研究、 4)社会人教育の推進
5)外国人留学生の積極的受け入れ が挙げられている。
学部学科とは直結しない独立専攻であるが、卒論生の受け入れ、博士前期課程志望者の確保、就職の世話、論文審査など、寄り合い所帯からくる問題点がある。これら重要な問題に現実的に対応するため、当面、各関連母体学科との連携を密にして運営する方針がとられている。前期課程の入試についても、社会建設工学、電気電子工学、機械工学、知能情報システム工学、応用化学工学、機能材料工学専攻の各関連母体学科専攻の試験を選択する体制がとられている。すべて初めての経験なので、いろいろな問題を解決していく必要がある。
現在、経済不況の不透明感の中、情報、福祉、環境などを中心とした産業のリストラが課題となっている。また、リサイクル社会の実現や、安全な環境に対する社会の要請も年々大きくなっている。環境産業で活性化を図ろうとする地元からの、本独立専攻に対する期待も非常に大きいものがある。
平成12年度からは博士後期課程もスタートし、本専攻の目指す学際的な教育研究活動が実質的に活発化していくことが期待される。
表1 環境共生工学専攻の構成
講座および教育研究分野 テーマおよびキーワード
循環環境工学講座(基幹)持続可能社会のための環境低負荷・循環型社会の実現
資源循環工学 廃棄物のリサイクル利用
リサイクル設計、環境システム、分解技術、資源化処理、
汚泥再利用、有害廃棄物最終処分、埋立技術
エネルギー変換工学 電気エネルギーを核としたエネルギー変換とその有効利用
エネルギー変換デバイス、自然エネルギー、新エネルギー、
エネルギー貯蔵、パワーエレクトロニクス
バイオ循環工学講座(協力)
生物資源工学 生物資源の環境低負荷で無駄のない利用
生物的変換、バイオプロセシング、バイオプラスチック、
生物機能制御、生物資源管理、ゼロエミッション
安全環境工学講座(基幹)安全で安心して生活できる社会の実現
防災システム工学 自然災害から社会生活を守る
自然災害、ライフラインシステム、災害弱者
地理情報システム、リアルタイム防災情報、防災教育システム
社会基盤管理工学 快適・安全な社会基盤のデザイン・創造
安全設計、環境制御、安全構造、安全計測
維持管理技術、社会基盤構造物、信頼性設計
安全ロボット工学 危険な作業・環境から人間を解放する
アクチュエータ制御、機能解析システム、危機管理、
システム監視・制御センサー、インテリジェントロボット
共生環境化学工学講座(協力)
物質安全工学 汚染・危険物質から環境・人間を守る
人工環境制御、光化学変換、環境微量計測、エコマテリアル、
生分解プラスチック、ケミカルハザード、高効率分離
連携研究所(中国工業技術研究所)
安全・機能管理工学 人工構造物の総合的安全診断と生態系機能利用技術
安全診断、生態変換予測