ISO14001とグリ−ンプロシュ−マリズム
九州産業大学商学部教授 齋藤實男
序
なぜ,98年7月末現在でISO14001認証取得が1,091件にも達しているのだろうか?認証取得サイト(組織[企業・自治体等])は,公害・地球環境問題を解決する上で,本当に未取得サイトより優れているのだろうか?認証取得をグリ−ンプロシュ−マリズムによって,より一層実りあるものにするにはどうしたら良いのか?
本稿は,その認証取得の意義と評価を,当の取得主体である企業や国家・自治体と消費者・人民(=E-S-P[企業[Enterprise]−国家・自治体[State]−消費者・市民[People]])で構成されている,特にこのステイクホルダ−の立場([Kun・T-1]p.31)を中心に明らかにしようとするものである。
第1章 システム化
ISO14001システムは,時空間から見て,どのような特色を持っているのだろうか?本章では,その成立の若干の歴史的経緯とシステムの内容を説明しておこう。
*歴史的背景
ISO14001システムという環境管理システムの国際標準化は,多国籍企業(E+E)の国際化対応,BCSD(持続的発展のための経済人会議,UNCEDの要請により90年設立,95年にWBCSDに発展)の要望でもあった。ISO14001の誕生は,92年6月のリオ・サミットへの提言を準備していたBCSDがISOに87年以来の持続的発展のための環境パフォ−マンスの国際標準の作成を求めたこと,これを受けて91年7月ISOがSAGE(環境戦略アドバイザリ-グル-プ)を設置し,93年2月にTC(環境管理専門委員会)207という母体を設けたことに基づいている。ISO14001は,このようにして96年9月1日に国際的に発効,同年10月20日に日本国内でJIS規格化した。
日本の企業の環境管理も,3S(時間[Span]空間[Space]種間[Species])軸の短・小・少から長・大・多への歪み揺らぐ拡張に伴って,60〜70年代のエンドオブパイプの局部的技術による人的産業公害防止・排出管理から総体的ゼロエミッション技術によるLC(Life
Cycle[生産・流通・消費・廃棄・リサイクル循環+インバ-スマニュファクチュアリング])システム管理へと移行している。この環境管理の変遷・移行は,日本では,企業の上のような環境管理の移行は,歴史的に国内的なE-S-Pの力関係の変遷から国際的なE-S-Pの力関係の変遷への転換過程に位置づけられる。
この国際的な力関係の変遷とは,グロ-バリゼ-ション(多国籍企業化[E+E],80年代)→地球環境問題化(酸性雨・オゾンホ−ル・地球温暖化・砂漠化・海洋汚染[86年チェルノブイリ原発事故],80・90年代)→規制(国連[S+S連合]・ISO/グリ-ンピ-スなどNGO[P+P]持続的経済発展,92年リオサミット,環境国際条約)→コンシュ−マリズム(P:告発型から提案型へ)→ISO14001認証取得(世界の企業E:EUを中心に持続的経済発展のための継続的環境システム的管理[EMAS[EU]/BS7750/ISO14001]構築,つまり世界産業連関的な最終消費財(E-P)=製品・中間生産財(E-E)の生産管理としての環境管理の構築)というE(E+E)-S(S+S)-P(P+P)の力関係のダイナミックな移行の中に位置づけられる。
*ISO14001システム
ISO14001とは,持続的発展のために,トップの意思決定・環境方針の下に,地球の一空間[=サイト]上の組織である民間企業・団体が企業のグロ-バルな国際的国内的な生産・流通[=貿易]・廃棄・リサイクルなどLC(ライフサイクル)の過程での投入→産出過程上のマスバランス,特に排出・廃棄量をインベントリ−し,環境影響評価を作成したもので,空間的には属地[=サイト]的に生じ,組織上の責任体制(一部原材料/部品納入・食堂経営・メンテなどのために出入りする他業者=他組織への環境システムの周知徹底の責任も含む)としては属人的に生じ,時間的には短期・長期的に錯綜・複合した因果関係をもって生じる地球環境問題に,国内の数値基準(定量化可能な目的・目標)・遵法でもって,また国際的なこの当該システム=国際標準をもって対応して,地球環境破壊を未然に防止するために,責任者が交代しても一種の内外への組織契約(≠以心伝心のなれ合いム-ド)として,環境影響評価に基づいた各個別部署の記録・責任体制の明確化を評価項目別に指示し,それらの明記されたマニュアル・記録・反省などの文書が継承されるような企業の内部環境監査のシステム(P-D-C-A)を構築させるものであり,それをさらにちょうど個々の大学(個別組織)を文部省(国家権力)が管理するように外部から認証機関が監査し,未来時間を睨んで,このシステムの継続的改善を企図したプログラムである。上述のように,このプログラムを設定したのがISOであり,14001に限らずISOシリ−ズ一般はグロ−バリゼ−ションの進む中で国際的に必要なシステム規格(グロ-バルスタンダ-ド)について、MNCや総資本の利害を調節したものと言えよう。
つまり,プログラムとはP(Plan:環境方針に添った目的・目標設定・計画性・遵法性・マニュアル整備)D(Do:
目標・計画の実施・運用=環境責任体制構築とその実行・記録の徹底・緊急時対応)C(Check:内部監査[含むAction]つまりエネルギ-節約,水質・大気・土壌・ゴミなどの排出規制・リサイクル目標達成度=PとDのギャップのチェック・マニュアル実行や記録などの点検・さらにそれの記録)A(Action:見直し,つまり経営陣によるPとCのギャップを考慮した上でのシステムの改善・反省・信頼度向上のための見直し)の過程的循環的システムを各業種に適応できるよう抽象的に表現したプログラムであり,そのP-D-C-A(1)システムを研修機関で資格取得する(要求項目ではない)などし,企業内教育に携わる内部監査人が監査し,認定機関(JAB)に認定された認証機関(審査登録機関:JACO,JQA,SGS,BSI,LROAなど約20機関[EMSのコンサルタントは異なるサイトでも不可,ただし別組織にすれば可],研修機関約20機関,審査兼研修[同一サイトにサ-ビス提供可]約5機関,EMSコンサルタント約数百組織・個人,98年8月現在,[Nik・M-1]参照)が外部から,予備資産(→書類審査)→本審査(→是正措置)→認証取得のフロ−チャ−トで監査し(その後,システム運用・内部監査の実施を原則年2回サ−ベイランス[維持審査]する,そうでない場合は必ず3年に1回更新審査)登録証を交付する。
*取得の現状
取得業界については,輸出主導型産業・同産業連関型産業が多く,電気機械(49.8[58.9]%)一般機械(10.7[12.6]%)化学工業(7.4[6.9]%)精密機械(6.6[6.9]%)輸送用機械(4.3[2.6]%)サ−ビス業(2.6[1.8]%)鉄鋼業(2.0[1.8]%)石油製品(1.6[2.6]%)([環境管理規格審議・マ員会調査・母数1,091[389]件,1998年7月31日現在[[
]内は97年8月31日当時の数値,以下同様])となっており,輸送用機械,サ−ビス業の伸びと電気機械の相対的割合の低下が特徴である。当初は,これらの上位業種の英国やドイツへ進出した日系多国籍企業(MNC)などが,先に発効したBS7750(ISO14001+騒音・臭気対策,ISO14001に発展解消予定[登録証切り替え可]1992年3月発効)やEMAS(BS7750+環境声明書公開,EU内のみ,1995年発効,EUではISO14001とダブルスタンダ-ド)を現地で認証取得し,日本国内のサイトにBS7750を英訳・解読・現場でのマニュアル作成など苦労して2年以上準備し展開していた。
地理的には東高西低((ISO14001取得事業所数1998年7月31日[97年8月])/(製造事業所[4人以上]数93年):茨城65[35]/9,664,埼玉49[16]/23,159,千葉34[16]/9,999,東京70[26]/37,743,神奈川100[46]/16,492であり,九州・山口・広島地区が広島14[4]/9.339,山口13(2)[3]/3,459,福岡16[3]/9,919,佐賀10[2]/2,468,長崎5[2]/3,163,熊本11[3]/3,671,大分14[8]/2,620,宮崎4[2]/2,563,鹿児島9[5]/3,476,沖縄0[0]/1,508,[Tsu・D-195]参照)となっている(認証機関所在地も東高西低)が,伸び率については,企業トップの意思決定に早く対応し内部監査人などの人材も豊富な東のモデル工場の取得ノウハウが西へ伝達しており([Sug-1]),西の伸び率のほうが高い。
ISO14001については,企業の業種(化学・家電・ICなどのLCの特殊性)毎・立地条件設備(サイト内における職員寮・食堂・売店・福利厚生施設の有無・焼却炉の有無・コジェネの有無・工業用水路の有無など)毎に特殊性があり,それらから内部監査の検査項目(水質・土壌・大気・臭気・騒音・振動・ゴミなど)の相違が生まれる。
なお,ISO14001については,先駆的企業は上述のように調査研究に丸2年経営者・副工場長・環境安全部部長などトップが張り付いて,P-D-C-Aのシステムをつくり,そのために準備費用だけで1,000万円分相当をつぎ込んでおり,競合他社にこのシステムづくりの秘密情報が洩れることを恐れている。かつては,企業広報誌に掲載されているような定型情報しか得られなかったが,最近は刊行物も数多く出版されノウハウが普及したし,環境PRの意味もあって,かつての非定型情報が定型化してきた。
次章では,このように普及してきた認証取得の意義と主として消費者・人民サイドから見たその他の問題点を論じてみたい。
第2章 認証取得の意義と評価
何のために企業・自治体などはISO14001の認証取得を急ぐのか?
消費者・地域住民はISO14001認証取得をどう評価し,どう読み解くべきなのか?
*10の意義
企業Eにとって,このISO14001の認証取得の意義は,10C((1)欧米市場での国際競争対応(competition),(2)納入先のグリ-ン調達対応(channel),(3)社内工場内環境意識の向上(corporate
environmentalism[ISO14001要求項目4.3.2][4.3.3]),(4)社会的責任遂行(community
responsibility),(5)遵法・環境行政(S)対応(code[4.2.2]),(6)グリ-ンコンシュ-マ-(P)(communication
with consumers),(7)地域住民(P)対応(consensus of community = stake holder),(8)環境災害・汚染の未然防止(check[4.3.7]),(9)3Rによるコスト削減(cost
down),(10)企業のゴ-イングコンサ-ン(continuity[4.5.3]))に纏められる。
認証取得数と経営実績及び前項で挙げた業種などとの関連については,収益性の大きさと上の(1)競争優位目的との間に相関が見られる。上のニ−ズ・成果については,本社からのトップダウンで渋々やったが図らずも,(3)環境意識の向上,(4)社会的責任遂行,(8)環境災害・汚染の・「然防止(9)3Rによるコスト削減などに効果があったという企業が多い。
これらの10の意義を充たすための認証取得企業によるプロモ−ション・PRについては,EUのEMASでは,環境監査に関わる環境基準達成目標と実績についての公表義務があり,この公表そのものが,中間財メ−カ−などの認証取得企業の環境に良い活動をしていることの取引先へのマ−ケテイング・コミュニケ−ションになる。ところが,ISO14001,BS7750(ISO14001に発展解消)にはその公表義務がない。だから,これらの認証取得証だけでも内外にPRしなければならないが,多くの企業では,そのPRが不十分であるように思える。本社および工場のPR(マ-ケテイング・コミュニケ-ション)と会社全容のPRパンフレット,パブリシテイ−・パ−ソナルセリング,名刺への認証マ−クの刷り込みや証書の掲示・工場見学・インタ−ネットホ−ムペ−ジ掲載などが行われているが,工場長などが理科系出身者が多く,特に地方のサイトはPR不足である。
以上のような意義を持つISO14001取得は,ISO9001(要求20項目,含む4.4設計管理),9002(19項目,含まず設計)などと別々に行われているが,MNCサイドのそれらの更新審査に関わる手間暇を考えて,最近TC207でもISO9001との合同審査が検討されている。次に,その問題点を解説していこう。
*ISO9001,2との合同審査
ISO14001,9001,2及び将来の16000s(RC:Responcible Care)の同時的外部監査を目指す,ISOのone
stop auditについては,4つのサン(1.参考,2.産業連関,3.3S軸,4.三権分立)問題が横たわっている。つまり,1.参考とは,ISO14001と9001,2の対応=参考のことであり,技術的内容的に9001の20項目や大小システム構築がどのように14001のP-D-C-Aの項目・システム構築に参考になり役立つか,という問題である([Mor・T-1]p.426)。
ここには,その内容面の異同・摺り合わせの問題と人事・ 管理面における品質管理(QC)部署と環境管理(EM)部署の管轄と共同作業の問題が横たわっている。ちなみに監査対象のマニュアルや書類・記録は項目分類が明示されていれば,ISO14001と9001,2のミックス書類でも構わないそうである(KPMG環境審査部:森氏)。次に,2.産業連関とは,9001の4.6購買における部品・原料・補助材料の仕入,4.7顧客支給品の管理における製品・サ−ビスの販売,これらと関わる4.3契約内容の確認など購買先からのインプット・生産後の販売先へのアウトプ
ット,販売先でのインプット・アウトプットと続く,原料から完成品・消費へとつながる連鎖のことであり,9001のこれらと14001の4.4.3のコミュニケ−ション及び納入業者に対する4.4.2教育訓練や4.4.6の運用管理への参考・対応についての異同と14001と9001,2の対外企業の重なり,産業連関・流通系列化と日本的商慣行・なれ合いの問題などのことである。3.3S(Span,Space,Species)軸問題は特に時間軸が一般的に14001のほうが長い問題を対象とし,システム作りに長い時間を要したり,個別企業ごとに両者のシステム構築に時間的ズレが生じるので9001が20項目あって時間がかかるとはいえ,またフォロ−アップ体制が組まれるとはいえ,同時審査までにタイムラグがあり,無理に時間調整すれば一般的には14001が場合によっては,どちらかが,不完全でいい加減なものになるのではないか,という問題のことである。4.三権分立とは外部監査人・内部監査人・被審査対象部署長の責任を巡るニュ−トラル性の確保と日本的集団経営の問題,とりわけ若い内部監査人が年輩の部長に注意しにくかったり,外部監査人を供応して抱き込もうとする傾向や監査コストを考えたときの情の問題,one
stop auditによるこの問題の助長の問題などである。この4.三権分立について田中氏は,その対策としてEMASを参照しながら,(1)企業と社会との関係における信頼性・公平性の確保,(2)「独立した第3者による監査(@監査人の認定・監督[(a)資格公認機関の設置(b)資格国
家試験]A経済的独立B異議審査委員会C内部監査人と外部監査人の兼業禁止D天下り禁止)」
([Tan・K-1]p.420)を提起している。
以上,one stop auditにおける癒着などに関わる4つのサン問題に触れたが,この問題は14001だけの審査にも纏わる問題である。
*中小企業支援
問題は,中小企業のシステム構築にもあり,現在通産省・経団連で中小企業向け対策が練られ,自治体([Nag・K-1]参照)でも講演会・研修・学習会などノウハウと補助金などで支援するところが出てきており,自らそのノウハウを自治体内に無料提供できるようISO14001に認証取得を目指・キ自治体(水俣市が2箇所の市立病院を含めて1999年3月取得準備中(3),千葉県白井町[98年1月,JQA]・上越市[98年2月,JACO]認証取得,施設では滋賀県工業技術センタ-[98年3月,JQA]・三重県環境保全事業団[96年11月,KHK-EA]認証取得)も出ている。ちなみに,産官学協同も視野に入れて,準備しているところ(官:名古屋通産局予算化・九州通産局導入検討中,大学:武蔵工業大学1998年中に取得予定・慶応大学/京都大学/長崎大学環境科学部が準備中)もある。
この補助金に関わるが,認証取得のノウハウ取得・準備費用については,前章で挙げたが,特にハイテク産業以外の中小企業(4)にとっては,手痛い問題となる。企業内教育に携わる内部監査人養成のための研修費用(3日コ-スで約30万円/人)認証機関による審査登録[更新審査]料金(5)の負担などがそれである。
*環境影響評価項目の落とし穴
環境影響評価についてのISO14001の要求項目には,個々の大気・水質・土壌汚染物質の細目も特定の環境パフォマンスの基準も挙げられておらず,ただ遵法と目標数値や重大性・可能性関連数値とを可能な限り挙げれば良いように要求されているにすぎない。国際的南北問題としても、遵法であるから,基準の低い国へポリュ−ションヘイブンを求めたMNCが認証取得しているのも事実である。
そこで,遵法面で国際的な国家の法,自治体の条例の対応が求められるが,それらの施行と現実の問題との間には対策が後手に回るタイムラグやギャップが見られるし,遵法そのものにもかつてのppm神話(緩い基準のppmまでは排出して良いと言うので,企業努力が損なわれた)と同様のPPt神話が生まれる可能性がある。
例えば,ダイオキシン([Yam・H-1]pp.17-21)合成界面活性剤(合成洗剤・乳化剤・染色助剤など)蛍光増白剤(ユニホ-ム)クロルピリフォス(室内汚染,白アリ退治)喫煙(室内ダイオキシン汚染)などについて,遵法ならば法的基準がないので野放しになる。サイト内の自動販売機で煙草や公害食品を売ったり,社員食堂でポリカ−ボネ−トの容器を使い,味付けにチャイニ−ズレストランシンドロ−ムの味の素を使い,食材に遺伝子組み替え食品・農薬づけ輸入食品を使用し,床をワックスできれいにし,合成インキ・塗料を使い,電磁波予防なしで,サイト内をジ−ゼル車が乗り回していても,ISO14001は認証取得できるのである。
筆者が10数サイト訪問(1996〜98年)した中で,環境影響評価項目にダイオキシンを挙げているサイトは一つも無かった。猛毒ダイオキシン対策に対する質問について,1サイトだけゼロエミッションに心掛けられている旨分かったが,そこも含めて環境影響評価項目や数値目標にその他の環境ホルモンも掲げられてはいなかった。
一般的に,土壌汚染については規制法がなく,遵法であり要求項目に従って環境管理のP-D-C-Aシステムが構築・整備されてていさえすれば,ISO14001は認証取得できるので,ダイオキシンなど環境ホルモンが環境影響評価項目から漏れて,ザルの認証取得になる。また,他の有害物質の数値目標は当然ながら遵法の面や常識からppm単位であり,疑問である。
*国家・自治体の入札条件
国家・自治体が,上の落とし穴に気づかず,ISO14001認証取得をグリ−ン調達などと称して,公共入札条件にした場合,認証取得していないが,それに習ってEMSを自主的に構築したサイトやダイオキシン問題を解決しているサイトなど優秀な組織が入札から外れる危険性もある(6)。
*グリ−ンプロシュ−マリズムの力
グリ−ンプロシュ−マ−,特にコミュニテイ−のステイクホルダ−は,ISO14001認証取得の落とし穴に気づき,環境影響評価項目のその内容を調査すべきであり,その前提として自らの運動によってEMASのようなその項目などの情報公開を求め,積極的にサイトの生産活動にコミットし,ISO14001を実りあるものにさせるべきである。この力を国際的に組織化し,ポリュ−ションヘイブンなど防ぐべきである。
また,その運動を強化し,環境ホルモン対策をしない企業製品のボイコット(refuse)ができるように脱環境ホルモンを求め,自ら定年後の手に技術のあるシルバ−人材や失業者など起用しながら,グリ−ンプロシュ−マ−型の生産生協を創立すべきであろう。
結
国際的E企業連合であるISOがS国家連合としての国連の要請を受けて,持続的発展を求めて,国際標準にしたのがISO14001である。良い面は,10の意義,とりわけ国際競争下での企業の国際的グリ−ン連鎖ができたり,CEによって従業員=生活者=消費者の環境意識も高揚することなどにある。
しかし,ISO14001システムには落とし穴(環境影響評価項目について何が脱落しているか)があるので,その構築を実りあるものにするために国際的なP消費者連合によるグリ−ンプロシュ−マリズムが必要である。
こうして,ISO14001充実のためには,E-S-Pの三位一体になったグリ−ン社会構築努力が必要になる。
注
(1)このP-D-C-Aシステムにおける理論と実践の重要性を解いたのが,地元山口市のクリタ化成 (JCQAより1996年12月25日認証取得)のO氏である。
「掴んで,狙って,創る」つまり,I(掴)→P(狙)→D(創)のIがなくて,P→D→C→Aに進もう とすると理論ばかりのPに終始する理論派では,口ばかり達者で「プラプラ(Plan-Plan)」(O氏)して実働にならないし,I(掴)→P(狙)がなくて,ただやるばかりの肉体派では「堂々(DO -Do)巡り」(O氏)に終わる。
(2)サイト名は,山口市がクリタ化成(96年12月)・山口松下電機(97年12月),徳山市が出光 石油化学(96年5月)・出光興産(96年10月)・徳山東芝セラミックス(98年3月),下松市が 日立製作所笠土工場(97年12月),岩国市がユニオン石油工業(98年3月),下関市がサン電子工業+三洋電波工業(98年3月),柳井市が日立東京エレクトロニクス(98年4月),厚狭郡が山 口日本電気(97年12月)などとなっている。
(3)その他の準備中自治体は,茨城県庁(99年),東京都板橋区(98年)や京都市・大阪府庁・岩手 県金ケ崎町・仙台市や施設では静岡県環境衛生科学研究所(98年)神奈川県産業技術総合研究 所(99年)である。官で準備中は建設省肝沢ダム・湯沢・京浜・東京工事・東京国道・利根川水系砂防・名古屋国道などの工事事務所である([Kan・Ka-1]p.185)。
(4)中小企業の内ハイテク産業の認証取得事例は篠崎製作所[Kom・M-1]や(株)コ−プフ−ズが 参考になる。この内,(株)コ−プフ−ズ冷凍食品工場(さいたまコ-プ・桶川市)は,常勤1 8名で,1998年1月28日にJACOから認証取得した。ノ-トレ-(餃子・焼売り)・ノ-台紙(中華まんじゅう)・コンテナ配送(ノ-段ボ-ル)・LPGボイラ-・排水処理徹底している。準備期間については,91年 さいたまコ−プが環境政策制定,94年「独自の環境マネジメント・環境制度導入」(「リサイクル の推進,ゴミ削減,レジ袋の削減,低公害車の導入,廃フロンの回収・分解,省エネ,商品包装の簡易化,塩化ビニル包材の削減」)展望:コ−プフ−ズのノウハウを店舗にも普遍化し,全体で の取得も準備中である(さいたまコ-プ「ニュ-スリリ-ス」,「環境21
NEWSLETTER NO.63」)。
ちなみに,みやぎ生協43店舗(本部 仙台市泉町)もJACOから1998年認証取得し,流通業 としては97年12月取得のCVSのam/pmジャパン,西友に次ぐ。
一般的に企業に対する自治体の支援については,隣の広島県が地球環境フォ-ラムでノウハウ支援 を行っている(構成員:エネルギ-業・製造業・商工会・流通業・金融業)。
(5)審査登録[更新審査]料金(JQA,1996年当時)
小(従業員1-100人)企業で環境負荷小・中・大の順に,1,379,000[415,000]円・1,916,000 [757,000]円・2,369,000[1,051,000]円,大(従業員1000人以上)企業で環境負荷小・中・大の順に, 2,612,000[1,051,000]円・4,043,000[1,981,000]円・5,414,000[2,935,000]円。
(6)同様の危険性は,意義の(1)の国際競争にも関連して,ISO19001,2が認証取得していなければどんなに優秀なQCをしていても欧米市場向け輸出ができないという,実質上のNTBがあった ように,ISO14001もそうなりつつある。
引用・参考文献
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[Kan・Ka-1]環境管理システム研究会『自治体における環境マネジメントシステムの対応動向:平成功9年度ヒアリ ング調査』環境管理システム研究会(事務局ト-マツ・杉元:ph092-642-4092),1998年6月。
[Kan・Ke-1]環境・経済政策学会『環境・経済政策学会1997年大会報告要旨集』 環境・経済政策 学会,1997年9月。
[Kom・M-1]古室正充他『中小企業のためのISO14000』フォレスト出版,1996年。
[Mor・T-1]森哲郎「企業における環境マネジメントシステムと品質システムの統合の有効性に ついて」[Kan・K-1]1997年9月。
[Nag・K-1]長崎大学環境政策研究会編『環境政策と環境監査』長崎大学環境政策研究会,1998年 3月。
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[Yam・H-1]山口大学排水処理センタ-編『山口大学環境保全』山口大学排水処理センタ-,1997年12月。