おもしろプロジェクト

『知られざる真実trasgenic cropplants‐』を実行して

農学研究科修士課程1年   中野香織


 遺伝子組み換え技術は1970年代に登場した新しい技術であり、理解するために専門的知識を必要とすることから一般国民に馴染みが簿く、技術的革新性ゆえに、これらの技術や食品に対する誤解や、不信、不安が生じているのが現状です。この遺伝子租み換え技術は将釆の食糧および環境問題を解決するために必要不可欠であり、2l世紀の地球を支えるキーテクノロジーとして期待されています。西暦2050年までに地球上の人口は100憶人に達すると推定されていますが現在の食糧供給体制では80億人しか賄えず、エネルキーも枯渇し、我々の生活が維持出釆なくなる、といわれています。農作物の単収の増加、農耕地面積の拡大を可能にし、多くの病害虫耐性作物の開発による農作物の生産性の飛躍的な向上が期待されます。
 私たちは、農学部の学生として、一般市民のこの技術に対する誤解や不安を取り去るため、遺伝子組み換技術や農作物に関する意識調査や市民フオーラムなどのパブリックアクセプタンスをおこなってきました.
 今回、この遺伝子組み換え食品についての意識調査を進めていくうちに、アメリカを代表とする諸外国からの遺伝子組み換え技術を用いた大豆、小麦、なたね、とうもろこしなどの輸入作物(表1に示す)に対する安全性の評価についての、国もしくは厚生省の指針とその内容について、かなりの不安を抱いていることに強く印象を受けました。

   表1

 また、近年、組み換え技術がさまざまな分野において応用されており、クローン羊やクローン人問など倫理的問題もとりだざされてきています,『人聞は怪物を作り出している』といった意見に私たちは、危機感を覚えました。またこういった作物の輸入による日本の農業への経済的な影響に対する不安感も抱いているようです。このことについては、ある部分食糧管理システムに依存してきた日本の農業が、肉などの輸入自由化によってゆさぷられているという現状も介間見た気がします。
 漠然とした不安の正体をつきとめるべく行ってきた意識調査の結果は私たちに意外な状況を知らしめました。意外に遺伝子組み換え食品について知っている消費者は少なくなかったといえますが、曖昧だ、何となく、といった回答が多く、また間違った、つまり科学的根拠にも基づいておらず、宗教がかっている考えか多いように感じました。遺伝子組み換え食品にかかわらず、人問の生活の根本である『食』に問連することについて感情的に考えてしまうことは否めません。まして、理解するのに専門的知識が必要でかつ、はっきりとした実体の掴めない、恐ろしいと感じているようなものについてなら、なおさらです。 曖昧な知識が、さらなる不安をかきたて、よくないものであるといったような想像を助長しているのも現状です。このように、思ったより消費者のもつ近伝子組み換え技術とその応用食品に対する嫌悪感ともいえるような感情は根深いものであるということを思い知らされ、いきずまることが多々ありました。倫理的な問題、人体や生態系への影響、安全性の問題、食源性疾患であるアレルギ一の問題等についての消費者のもつ意見は情報不足がもたらしているものがほとんどであるといえますが、感情的な部分が見え隠れしているがゆえに、解決していくためには情報だけでなく十分な時間が必要であると感じました。 21世紀には高齢化社会と食源性疾患、食糧不足を筆頭をした社会的間題がかならずおとずれ、人類は好むと好まないにかかわらず遺伝子組み換え食品をとらざるを得ない局面にあるといえます。これから避けて通ることの出来ない食程危機にむけて、将釆の世界人類の為に広く行っていこうと試みたパブリックアクセプタンスも市民にとってはわかりづらく専門的すぎて、受け入れ難いもののようでした。また、我々はその他団体主催のフオーラム等にも参加しましたが、この遺伝子組換え技術に問して適切に述べられた方は少なく、多くがその団体、または個人の意見の強く反映されたものばかりのような印象を受けました。また、このようなフオーラムはその内容の菩し悪しに関わらず、多くの人たちがある意味、マインドコントロールにも似た現象に襲われてしまうということも再認識させられ、我々はパブリックアクセプタンスのあり方について、十分に考慮しながら、何に対しても中立の立場で行っていかねばならないと改めて思いました。
 遺伝子組み換え技術は1970年代に問発され急速に発達しましたが、技術的面とそれに平行したハックグラウンドがかなり遅れているように感じました,国や政府の取り組みも平成3年から実施され始め、まだまだ十分であるとは言い難い気がします。
 今回の調査ではパブリックアクセプタンスを行うまではまではいかなかったにしても消費者の漠然とした不安の正体をつきとめることができたという成果は挙げることが出釆たのではないかといえます。通常、私たちは農学部の学生として身近に遺伝子工学の世界に直接触れていますが、このプロジェクトを通して実験では得られない、とても重要な側面を接し、そして考える機会を得ることができました。遺伝子組み換え技術等のニユーテクノロジーに対する市民の抱いている感情の現状をいやというほど思い知らされたのと同時に何か大切なことを得たような気がします。将釆、遺伝子組み換え技術を応用した多くの異種遺伝子の特性をもった食品が誕生してくることは否めませんが、今回のようなプロジェクトが今後、パブリックアセプタンスを行っていこうとする方達が行動する上で、少しでも参考になれば光栄です。