4.排水処理に思う
経済学部 板垣 忠
本学に排水処理施設が設置され,排水処理センター運営委員会をはしめとする関係者とのご努力によって,「学内から一切の汚水を排出しない」という排水処理の基本方針が堅持され,「地域社会の範となっている」ことは大変喜ばしいことであり,関係者の皆様のご努力に対し深く敬意を表する次第である。 排水処理センターの運営については,センター長の林謙次郎先生を中心とする運営委員の皆様におまかせしておけば間違いはないので,すっかりおまかせしてきているが,最近になって,特殊排水処理のための費用も全学的に負担すべきではないかという意見が出ているということを耳にして以来,少なからざる関心をもってその成り行きを見守っているところである。 私は至って化学に弱く,その意味では排水処理や環境問題について語る資格はない。したがって,以下に述べることは的をはずれているかも知れないが,運営委員から依頼を受けたので,主として上記の点について私見を述べてみたい。ご批判をいただければ幸いである。 まず,特殊排水処理のための費用を全学的に負担すべきであるというのはいかなる理念ないしは論理に基づいているのだろうか。推測するところ,排水処理施設は大学全体の施設であり,一切の汚水を排出しないというのは大学の責任だからというのが論理の一つになっているのではないかと思われる。これは確かに一つの論理に違いない。だからこそ施設設置のための費用は関係者のご努力によって特別な予算をもらったのであろうし,決して施設利用者だけが負担したのではなかろう。また,施設に要員を配置しておくことに伴って発生する最低の費用たとえば教官の研究費や研究旅費は全学的に負担しているはずである。すなわち,大学全体の施設だから,それを設置し必要な要員を配置しておくために発生する最低の費用いわば絶対的固定費は大学全体で負担し,決して利用者だけが負担しているのではない。また,大学の責任云々の前に研究者一人ひとりの責任があるのではないだろうか。 以上のように考えれぱ,次に,施設の利用に伴って発生する費用一‐一大部分が変動費と思われる一‐一は利用者が利用量に応じて負担すべきであり,それまでも非利用者も負担するというのは筋が通らないように思う。もしそうなれば.非利用者は利用者に対して利用量を少なくするよう求めることにもなりかねないであろう。 この問題に関連して受益者負担という言葉がでているようであるが一一もっとも受益者負担という言葉がどのような意味で使われているのか定かでないが一一ここでは受益者負担というより利用者負担という方がよかろう。利用に伴って発生する費用は利用者が負担するというのが明々白々な論理ではないだろうか. さらに,理科系と文科系の教官当積算校費の決定的な違いを指摘しておかなければならないであろう。今年度の予算で修士講座制の教授についてみると,実に3.5倍の開きがある。このような大きな違いのなかには,断定はできないが,当然実験に伴う諸費用が含まれているのではなかろうか。確かに,特殊排水処理のための費用が研究を圧迫しているであろうことは理解できるが,そこでは,研究費の不十分さこそ問題にされるぺきであって,それを,はるかに研究費の少ない文科系も負担して欲しいというのは明らかに問題のすりかえのように思われる。 共通経費をどのように負担するかは確かに技術的な問題であるが,それはより合理的な基準に基づいて処理されなければならない。このようなことを念頭におきながら,とくに特殊排水の処理について私見を述べた。結論的には,現段階では.特殊排水の処理に必要な費用を全然特殊排水を排出しない者も負担しましょうという程おおらかな気持ちにはなれないというのが偽らざる心境である。