3.大学の環境を良くするためには
工学部 中西 弘
大学の環境保全の為に,実験室の化学排水や構内の生活汚水,あるいは廃棄有機溶剤等の汚濁物質を学外に一切排出しないという回収,処理・処分のシステムが整備された。このことは,大学の社会的責任として当然の措置であるが.単にこうした処置だけで大学の環境保全が全うされただろうか。大学の環境保全といった場合,それは3つの意味を持っている。第一は学内の環境保全であり,第二は大学外の環境に及刑ます影響である。第三は環境保全に対する社会活動である。公害が大きな社会問題となり,大学もその社会的責任が問われたのは第二の問題であり,とりあえず大学が社会に迷惑を及ぼさない為の措置として.学外に排出される汚濁物質に対する規制が取られた。しかしながら,第一の学内の環境問題についても十分ではない。そこで大学の環境を良くするために,何が成され,何を成さねばならないかを改めて考えてみよう。
1.学内の環境保全
山口大学内の環境を快適なものにする為に,各キャンパスによって多少の事情は異なるが,共通して考えられるものに l)学内の交通騒音の防止,2)清潔なごみの投棄,収集,処理,3)構内の緑化等が挙げられる。学内の交通については.既に規制が定められており,これを遵守すれば問題がないことになっているが,現実にはこれが十分に守られていない。特に不法駐車やバイク騒音は目にあまる。違法な駐車や禁止場所へのバイクの乗り入れは,厳しく取り締まることが環境保全の立場からも切望される。ごみの処理については,極めて初歩的なことであるが例えばタパコの吸殻の投捨ての様な不心得な行為が後を絶たない。構内の美化の為にも,先ずはごみを正しくごみ箱に捨てる様に指導・監督を強化することが,残念ながら大学生にも必要である。また,ごみの収集,処理は我々の責任であるが,不燃ごみ,可燃ごみ,あるいは有害ごみの分別,収集が正しく出来ているか.不燃ごみ,可燃ごみの処置が適正に行われているだろうか,もう一度検討してみる必要がある。なお,廃化学薬品や排水銀乾電池のような有害廃棄物(ごみ)についての処理,処分システムはまだ整備されておらず,このことについては早急に制度を確立する必要がある。また構内の環境を決適なものにする為に,種々工夫されているが,緑化事業も重要な要素である。大学のシンボルとなる樹木を植え,特徴ある緑のキャンパス造りをめざすことを考えて良いのではなかろうか。
2.学外に対する環境影響
既に施設として稼動している実験室の特殊排水,構内の生活排水,あるいは廃有機溶剤の処理・処分は順調に行なわれているだろうか。施設が稼動してから十年近く経っており,機器が壊れたままで放置されているものはないか。現実には,水質自動計測機器のいくつかは壊れたままで補修されていない。これには予算上の制約も関係していようが,施設が正常に操作されるよう努力しなければならない。また,処理水の水質の監視が十分であるか,さらに外部甜こ処分を委託した廃有機溶剤の処理が適正になされているかその実態を十分に把握しておくことは排出者の責任である。なお現状において,有害廃棄物の処理・処分体系は十分でないが,そのシステムの確立が当面の課題である。その他,新しい化学薬品の使用の実態の把握とそれに迅速に対処出来る処理・処分体系の確立も重要な今後の課題である。
3.環境教育と社会活動
単に大学は,学内の環境を良くし,外部に対しても公害を排出しないと言うだけでは,環境保全に対する使命を果たしたとは言えない。即ち,学生への環境教育を通して環境保全に寄与する人材の育成と意識の高揚を図ることと,環境保全に関する社会活動を積極的に行うことにより,大学が環境保全に対しても社会に貢献することが必要である。こうした積極的な教育と社会活動を通して社会に寄与することは,我々の重要な社会的役割の一つである。