報告者:山口大学大学院連合獣医学研究科博士課程3年 円城寺 秀平
1.日時
2016年10月12日(水) 16:00-18:00
2.企画者
山口大学大学院連合獣医学研究科 獣医学専攻 大学院生一同
3.代表者
円城寺秀平、今井啓之
4.内容、目的
大学院生の視点から、各研究分野で活躍されている若手の先生をお呼びして講演を行っていただく。また、大学院生を中心にして主に先生のキャリア形成についてフリートーク形式で座談会を行い、大学院生の将来や研究生活に関して意見をいただくことで自身のキャリア形成の参考にする。講演会には学部を問わず多くの学生にも参加を促し、大学院進学への興味を持ってもらうきっかけにしてもらうという目的もある。
5.概要
今回はクマムシに関する研究で有名な慶應義塾大学の特任講師である堀川大樹先生をお呼びして、座談会と講演会をしていただいた。多くのメディアにも取り上げられており、独自のスタイルで自身の研究内容の認知度の上昇、研究費の獲得などの試みをされており、研究内容だけでなく新たな研究者のモデルとして興味深い講演会を行っていただいた。研究座談会と講演会の詳細な内容については次ページに記す。
6.参加人数
63名(学部生、大学院生、教職員)
特に学部生の参加が多かった。
7.座談会内容
堀川先生を中心に9名の大学院生が参加してフリートーク形式の座談会を行った。座談会ではセミナーの内容や一般的な質問ではなく、特に講師の先生のライフイベントやキャリア形成、私生活など通常の講演会だけでは知ることができない内容について質問を行った。堀川先生が研究を続けるきっかけとなった出来事や当時の考え、今後研究を続ける上で重要になってくるであろうことなど多くのことを聞くことができた。特に印象的だったことは、獣医という強みをもっと活かせるという意見をいただいたことであった。普段、獣医の世界にいると獣医師であることに対してあまり特別なことを考えたりしないが、堀川先生にご意見をいただいたことで再認識することができたように感じる。
8.講演内容
堀川先生の研究成果を、大学院、NASA、パリ大学と先生が研究を行ってきた様々な場所と共にご紹介いただいた。研究の内容自体もとても面白く聞くことができたが、現在精力的に行われている「独立した研究者」としての活動が大変刺激的なものだった。国や研究機関に依存せずに自身の研究を行うために、まず先生自身と研究対象であるクマムシについての認知度を上げる方法、研究資金を獲得する方法を多様な視点から行われていた。ブログやSNSを利用して情報を発信することから、書籍やメディア出演、さらに研究対象であるクマムシのキャラクター化など多くの試みをされており、生物学研究者の講演ではおそらく聞くことができない知識・経験を拝聴することができた。
9.質疑応答
時間の都合上、2つの質問しか受け付けることができなかった。
一つ目は、「先生よりも先に宇宙にクマムシを打ち上げてその成果を発表したグループが用いていたクマムシの種類はどのクマムシだったのか。」
堀川先生が樹立したヨコヅナクマムシではなく、別の種類のものである。また、そのグループは長期の飼育や培養を行ったわけではないとのことだった。
二つ目は、「クマムシには腸内共生菌などは存在するのか。」
クマムシに共生する他の生物がいるかどうかはまったく明らかになっていないが、いるのではないかということだった。培養の際に用いるクロレラがシート状になる変化が、放射線を照射した後のクマムシの培養時には見られにくくなることから、クマムシの体表面や腸内に微生物が共生しており、その生物が放射線により影響を受けたことによる変化ではないかということだった。
10.まとめ
研究についての深い話だけでなく、研究者の在り方や多くの可能性についても講演していただいたことで大学院生だけではなく教員の方や学部生にとっても刺激的な講演会になったと感じた。実際にいただいたアンケートの結果については以下に記す。
11.参加学生の感想(アンケートから抜粋)
・研究内容もだが、これまでの流れ、人とのつながりなどの話はとても参考になりました。
・クマムシの生態だけでなく、研究する面白さも知れました。
・ライフイベントに実感があってよかった。
・専門知識がなくてもわかりやすかった。
・斬新な考えばかりですごく楽しかった。
・身の上話も含まれていて楽しく聴けました。
・全く知らないクマムシについて興味がもてました。
・研究のいろいろなパターンを知れた。
・研究内容についての講演もとてもわかりやすく、また楽しみながら自己流のスタイルで仕事をしているところがとても参考になりました。
・内容が難しすぎず、自分にも理解できる内容だった。また話し方が面白かった。
・クマムシのことだけでなく人生についても学べたから。
・クマムシはこんなに耐性あるのに、偏食なところが可愛いと思いました。
・あきさせないプレゼンだった。
・アカデミアから外れることで、見えてきたりできることが増えることがわかった。
・堀川先生のキャラクターが素晴らしい。
・科学の話・研究の内容についてもっと聞きたかった。
12.反省点
今回の講演会に際して、学部生、他学部の学生に対する告知が十分ではないように感じたため、ポスター掲示場所を増やす、メール等でさらに告知してもらう、開催する日時や時間帯の調整などが必要であると考えている。次回の開催に向けて改善していきたい。
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