大学院生企画 第6回特別講演会を開催

熊本大学・発生学研究所細胞医学分野准教授 日野信次朗氏

報告者:山口大学大学院連合獣医学研究科博士課程3年 伊賀瀬 雅也 

1.日時 
 20171003日 17:00 - 18:00 (座談会:18:30 - 19:30

2.企画者 
 山口大学大学院連合獣医学研究科 獣医学専攻 大学院生一同

3.代表者 
 伊賀瀬雅也、今井啓之

4.内容、目的 
 大学院生の視点から、各研究分野で活躍されている若手の先生をお呼びして講演を行っていただきます。また、講演では、先生自身のキャリア形成についても触れていただき、大学院生の将来や研究生活に関して意見をいただくことで自身のキャリア形成の参考にします。講演会には学部を問わず多くの学生にも参加を促し、大学院進学への興味を持ってもらうきっかけにしてもらうという目的も含まれています。

5.概要
 今回は、エピジェネティクスの研究を活発に行われている熊本大学の准教授である日野信次朗先生をお呼びして、講演会を開催しました。先生は、発生医学(分子遺伝学・分子生物学・細胞生物学などを基盤として発生学的視点から生命科学と医学を融合する学問領域)の統合的な研究推進を行なっている発生医学研究所に所属しており、環境応答とエピジェネティクスの分野で注目されている研究者の1人です。エピジェネティクスという現象は、非常に幅広い研究領域に関連しているため、多くの大学院生にとって、本学ではあまり例のない研究テーマ、研究者像を学ぶことができました。
 講演会の詳細な内容については7に記します。

6.参加人数
 今回は夏休み明け直ぐの開催でありましたが、合計40人程度の方々が参加されました。 

7.講演内容
 真核生物において、全ての遺伝子がDNAメチル化やヒストン修飾などで印付けされることにより、厳格に制御されている。これらの印付け(エピゲノム)は、細胞分裂を越えて継承されることから細胞記憶として機能する。エピゲノムは、細胞分化と共に再構築され、細胞アイデンティティーの確立や維持に必須の役割を果たす。一方で、栄養、酸素、炎症等の環境因子の影響も強く受ける。このような環境応答性エピゲノムは、長期的な体質形成や慢性疾患リスクと密接に関わっていると考えられるが、その実体はあまりわかっていない。
 細胞のエネルギー代謝特性は、個々の細胞機能に即して確立されるが、環境に応じた可塑性も重要である。また、慢性的な環境ストレスは細胞の代謝特性に強い影響を及ぼし、メタボリックシンドローム、がんや神経疾患等の生活習慣関連疾患の素因となると考えられている。
 我々は、細胞の代謝可塑性を司るエピジェネティクス制御の仕組みを解明する目的で、ヒストン脱メチル化酵素LSD1及びLSD2による代謝遺伝子制御について研究を行っている。これら分子はフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性アミンオキシダーゼ活性を持ち、ヒストンH3のリジン残基を脱メチル化することにより遺伝子発現を制御する。我々は、これまでにLSD1及びLSD2が栄養や酸素環境に応じた代謝遺伝子の発現調節を行うことを明らかにし、脂肪細胞やがん細胞の代謝可塑性に必須の役割を果たすことを報告した。
 本セミナーでは、これまでの成果を紹介しつつ、体質や疾患リスク形成におけるエピジェネティクス機構の重要性について考察したい。

8.質疑応答
 会場からの質問は、そのほとんどが教員の先生からでしたので、次回以降は、さらに大学院生の積極的な参加ができるよう質疑応答の時間の形式を考える必要があります。

9.まとめ
 研究についての深い話だけでなく、研究者の在り方や多くの可能性についても講演していただいたことで大学院生だけではなく教員の方や学部生にとっても刺激的な講演会になったと感じました。

10.反省点
 大学院生の参加がこれまでよりも消極的でしたので、次回以降、質疑応答の時間を見直す必要があります。



 
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