報告者:山口大学大学院連合獣医学研究科博士課程3年 伊賀瀬 雅也
1.日時
2018年03月07日 17:00
- 18:30
2.企画者
山口大学大学院連合獣医学研究科 獣医学専攻 大学院生一同
3.代表者
伊賀瀬雅也
4.内容、目的
大学院生の視点から、各研究分野で活躍されている若手の先生をお呼びして講演を行っていただきます。また、講演では、先生自身のキャリア形成についても触れていただき、大学院生の将来や研究生活に関して意見をいただくことで自身のキャリア形成の参考にします。講演会には学部を問わず多くの学生にも参加を促し、大学院進学への興味を持ってもらうきっかけにしてもらうという目的も含まれています。
5.概要
今回は、脳科学分野で超一流の研究をなさっている藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門 教授の宮川剛先生をお呼びして、講演会を開催致しました。宮川先生は、知覚・運動機能や高次認知機能のテストを含む「網羅的行動テストバッテリー」を用いて180以上の系統の遺伝子改変マウスの行動を評価し、人の精神病患者の脳で確認されている現象と非常に酷似した表現型を示すマウスが存在することを明らかとしました。このように、動物モデルを用いた人疾患への応用は、獣医学領域でも重要な研究分野であり、先生のご講演を聴講することで、大学院生として、今後の研究戦略について学ぶ機会が得られました。
また、先生は心理学で博士号を取得されており、さらにアメリカのトップラボでの研究経験もお持ちでした。講演会後に、先生とお話をもつ時間も設けることができ、大学院生一同、とても刺激をいただけました。
講演会の詳細な内容については次ページに記します。
6.参加人数
合計45人程度の方々が参加されました。今回は、これまでと違い、獣医以外の参加者が多く、医学部、時間学研究所、理学部からのご参加がありました。
7.講演内容
演者らは知覚・運動機能や高次認知機能のテストを含む「網羅的行動テストバッテリー」を用いて180以上の系統の遺伝子改変マウスの行動を評価してきた。この中で、活動性や作業記憶、社会的行動などの顕著な異常を示す系統を複数同定することに成功している。これらのマウスの脳を、網羅的遺伝子・タンパク発現解析、組織学的解析、電気生理学的解析など各種の手法で調べたところ、ヒトの精神疾患患者の脳で報告されている現象と酷似した表現型が複数確認された。さらに、脳の一部の細胞が疑似的未成熟状態に留まっている現象が複数の系統で共通して生じていることを発見し、これと同様な状態がヒト患者の死後脳でも見られることを明らかにした。これらの結果は、神経の興奮性や炎症等に影響をおよぼす様々な異なる遺伝的・環境的要因が、脳内で「疑似的未成熟状態」をもたらし、それが共通する行動異常を引き起こしていることを示唆している。異なる原因によって誘導される共通した脳内の現象は、他にも様々なものが存在することが想定され、今後、この種の「脳内中間表現型」を同定し、その機能を明らかにしていくことが重要であると考えられる。本講演では、遺伝子改変マウスを用いた精神疾患の研究を例にとりつつ、遺伝子と行動の関係を理解していくための戦略についての議論も行う。
8.質疑応答
前回は、教員からの質問しかありませんでしたが、今回は、大学院生の積極的な参加が認められました。
9.まとめ
研究についての深い話だけでなく、先生ご自身の研究生活についても講演していただいたことで大学院生だけではなく教員の方や学部生にとっても刺激的な講演会になったと感じました。
10.反省点
その年度の後半の院生企画セミナーは、開催時期がいつも春休み中で、学部生の参加が少ないように感じるため、日程はもう少し見直した方がいいかもしれないと感じます。
|