13.山口大学吉田地区構内の水質調査

理学部 分析化学・無機化学研究室

排水処理センター

 山口大学吉田地区には雨水,生活排水(食堂,学寮,養護学校のそれを含む)および実験洗浄排水の3系統管路が敷設されており,雨水管路は直接神郷川や九田川につながれ,また,実験洗浄排水については,六価クロム,水銀,pHのチェックにより異伏がなければ生活排水と合流して生活排水処理施設に入るようになっている。生活排水処理施設で活性汚泥法により処理した排水は,直接九田川に放流されている.その放流水について,水量,pH,COD,BOD,SS,アンモニアを常時監視する装置も設置されている。

 構内には他に九田川に注ぐ水田灌概用水路と,事務局前を通り正門脇で九田川に合流する「平八溝」と呼ばれてきた小川がある。

 分折化学・無機化学研究室は構内で生じる排水や平八溝等の水質の実態を知り,又,構内からの水の九田川の水質に与える影響の有無をも知る目的で,年1回,定められた地点において,2時間毎,24時間にわたる採水,検査する調査を多年継続してきた。そこで,排水処理センターもその発足以来その調査に協力し,継続していくこととした。

 両者が協力して調査した結果の概要を以下に記す。

1.調査年月日

(1)1983年7月4日(月)・5日(火)(晴れ一時雨),(2)1984年5月8日(火)・9日(水)(晴れ),(3)1985年7月3日(水)・4日(木)(雨)

2.検水

 実験洗浄排水A:実験洗浄排水処理施設への流入水(観測点A)

 流入水B   :生活排水処理施設への流入水(観測点B)

 処理水C   :上記施設で処理した排水で,塩素滅菌直前の排水(観測点C)

 小川D    :正門脇のいわゆる「平八溝」の水(観測点D)

 検水F及び検水G:生活排水排水口より下流の九田川の水(観測点F及びG)(図1参照)

 検水H:上記排水口より上流の九田川の水(観測点H)

3.測定項目

 水温,流水量,pH,SS,COD,DO,陰イオン性界面活性剤並びにリン酸,塩化物,アンモニウム,硝酸および亜硝酸の各イオン。測定法は主にJIS工場排水試験方法(K0102)によった。

4.結果並びに2〜3の考察

(1)排水量

パーシャル・フリューム流量測定法で測定した観測点Bにおける排水流入量は,’83年が(860一3000)G/d,平均1,700G/d,’84年が(400一1600)G/d,平均1000G/d,’85年は(1600一5200)G/d,平均2700G/dであった。流入水量は降雨及びその量にかなり速やかに応答していることも分った。一方排出水量に対する排水量自動測定器による1日当りの平均指示値は上記の値のそれぞれ54%,65%および63%と低値を与えている。この差は処理施設の容量を越えた流入量があると機器による計測が自動的に止まるようになることに原因している。

(2)水温

 観測点Dにおける水量はわずかであるため,気温に速やかに応答することを示したが,他の観測点における検水は気温の影響を受けずほぼ一定の値を示していた。

(3)p H

 観測点A,BおよびCにおけるpH域は’83(7.2一7.9),’84年(7.1一7.8),’85年(7.6一8.7)であった。また,D地点におけるpHは’83年(7.3一9.5),’84年(7.3一9.75),’85年(7.7一8.2)であった。pH9を越えるときは晴天で8時〜16時の間であることから,異状に高いpHを示すのは光合成に原因しているものと思われる。

(4)COD

 生活排水処理施設に流入するCOD負荷は予想される通り日中(8:00〜20:00)高く,夜間は低下する。放流水中のCOD値は平均値として’83年6.4ppm,’84年9.1ppm,’85年12.6ppmを得ている。’85年の値がやや高いのは,流入水量が異常に大きかったため,曝気による処理を行なわなかったことによる。尚COD排出量はそれぞれ11L/d,9.1L/d,34L/dでいずれも規制値40L/d以下であった。

(5)窒素

 実験洗浄排水中のアンモニウム,硝酸の各イオンの濃度は予想される如く昼間は高く,夜間は低値を与える。’85年は生活排水処理施設が機能しなかった為に検水Bと検水Cにおける窒素の存在形態及びその濃度に差は認められなかったが,他の年では処理槽中でアンモニア態窒素が減少して硝酸態窒素が増加しており,処理槽はよく機能していたといえよう。

(6)リン

 検水AおよびB中のリン濃度の経時変化は窒素の場合と類似した行動をとるが,生活排水処理施設内ではほぼ均一化されてくる。放流水中のリンの平均濃度は流入水のそれに比ベてやや高くなる傾向があり,しかも,九田川のリン含量に比ぺるとかなり高い。九田川の水量によってはその水質に影響を与える可能性があることはアンモニアの場合と同様である。

(7)陰イオン性界面活性剤

 生活排水処理施設への陰イオン性界面活牲剤の流入量が昼間高まるのは当然予想されるところであるが,夜おそく迄その濃度が減少してないのは二つの学寮と一つの職員寮の排水の影響によるものだろう。また,流入水Bに比ぺて処理水C中の陰イオン性界面活性剤の濃度は著しく減少する。減少率は,雨水の影響のなかった’84年が96%,少し影響のあった’83年が92%,著しく雨水が流入してきた’85年が70%であった。処理槽が正常に機能する限り放流水(処理水C)中の陰イオン性界面活性剤濃度は九田川中のそれに匹敵する程度である。