3.山口大学の環境汚染防止対策施設整備の経緯について

施設部長 大西 丈二

1.緒 言

 山口大学においては,教育・研究・医療活動などに伴い各種の廃棄物が生じている。廃棄物と総称されるこれらの物質は,廃水に限らず終局的に固体,液体又は気体として自然環境に排出する全ての物質がその範疇に入り,その中には環境汚染の原因となり又,人の健康に影響を与える物質も多い。このため,環境汚染防止や公衆衛生の面からこれらの廃棄物を有効かつ適切に処理し,無害化と排出絶対量の低減に努めなければならないことは大学に限らず発生者の第一義的な責任である。このため山口大学では,環境汚染等防止対策委員会の答申に基づき,昭和49年度から昭和53年度にかけて排水に係る処理施設を整備してきた。

 環境汚染防止対策としての処理施設の整備は,そのこと自体は重要な施策であるが,対策の基本は,発生源であるが故にその処理に対して社会的責任と責務を負っていること,又その構成員である教職員・学生がその立場の如何を問わず,廃棄物の処理と環境保全との関連と意義を良く理解していかに原点処理に努めるかである。将来の処理技術の進歩もさることながら,この原点処理思想の普及と実践が環境汚染防止対策の持続的発展を保障する鍵であるといっても決して過言ではないであろう。

2.施設整備の経緯

2−1 委員会答申と処理施設整備計画

 本学の処理施設の整備は,昭和48年9月12日付,山口大学環境汚染等防止対策委員会答申,「山口大学の排水処理について」の基本的事項を具体化するために立案され,実施されたものである。答申では,(1)排水処理の基本方針,(2)排水処理計画,(3)特殊廃水処理施設,(4)特殊廃水処理要項および廃棄有機溶剤処理要項,(5)暫定措置, (6)予算措置その他の6項目で構成されている。昭和49年度以後の整備は,この答申に沿って年次的に実施されたものであり,施設部としても当時の処理技術を詳細に検討して計画を進めた訳である。以下,建設年次を追って,施設の概要を説明したい。

2一2 廃棄有機溶剤集積場

 前述の委員会答申と付属文書の昭和48年8月20日付,排水処理専門分科会報告書をふまえ,廃棄有機溶剤は,学内貯留と処理専門業者による外部委託処理の方針で臨むこととなった。このため,昭和49年度に吉田・常盤・小串地区の3地区に集積場を整備した。

 @ 集積場の構造・規模  3地区共,鉄骨造平屋建,面積l9F

2−3 特殊廃水処理施設

 前述の委員会答申及び,排水処理専門分科会報告書をふまえ,全学をその対象として吉田地区に無機系廃液の処理施設の建設を計画し,昭和50年度に整備した。特殊廃水とは,山口大学排水処理規則別表に掲げる,カドミウム,シアン,六価クロム,及び水銀等の有害物質を含む汚水をいうもので,処理方式は検討の結果,凝集沈澱法が採用された。

 @ 処理施設の構造・規模  鉄筋コンクリート造平家建,面積160F

 A 処理方式    凝集沈澱法,活性炭・キレート樹脂吸着法

 B 処理能力    バッチ式,1回処理3G(最大),1回当り原廃液量600P

2一4 生活排水処理施設

 前述の排水処理専門分科会報告書をふまえ,吉田・常盤・小串地区の3地区についての整備を実施した。

(1)吉田地区

 吉田地区の構内排水管路を,雨水排水,生活系排水及び,実験系洗浄排水の3系統の分流方式とした。昭和52年度に生活系排水管路の一部と生活排水処理施設を整席し,翌年の昭和53年度に実験系洗浄排水の自動検水,及び処理のための実験排水処理施設と併せて構内全域の排水管路を布設した。

 ○ 生活排水処理施設

  @ 処理施設の構造・処理能力 鉄筋コンクリート造,処理能力 800G/日

  A 処理方式         生物化学的処理法,長時間ばっき方式

  B 排出水の設計水質     BOD:20ppm 以下,SS:30ppm以下

  C 管理棟の構造・規模    鉄筋コンクリート造平家建,面積112F

                 (管理室,休養室,電気室,自家発電機室)

  D モニター装置   pH(水素イオン濃度),BOD(生物化学的酸素要求量)

             SS(浮遊物質量),NH4,UV計,水量,ばっき風量

 ○ 実験排水処理施設

  @ 処理施設の構造・規模  鉄筋コンクリート造平屋建,面積32F,

                地下排水槽125G

  A 計量水量        125G/日

  B 排出水の設計水質    水質汚濁防止法に定められた排水基準

  C モニター装置      pH,T−Cr,Hg

(2)常盤地区

 常盤地区は公共下水道整備地域内にあり,構内排水管路を雨水排水と生活系排水の2系統に分流し,生活系排水は公共下水道に排出するものとして計画した。昭和50年度に管路の布設と公共下水道接続を完了している。

(3)小串地区

 小串地区も常盤地区と同じく公共下水道整備地域にあり,構内排水管路を雨水と生活系の2系統分流として,生活系は公共下水道に排出するものとして計画した。昭和53年度に管路の布設と公共下水道接続を完了している。

3.結 言

 山口大学の排水処理を目的とする各施設の整備の経緯とその概要は以上のとおりである。施設部は,昭和48年の委員会答申に沿った施設整備をこれまで実施し,又,現在も排水処理センター事務を通じてセンターの運営に日常的に関与している。この意味で冒頭申し上げたことについて理解され,諸施設が今後も円滑に運営できるよう,関係各位の御協力を願うものです。