山口大学吉田地区構内の水質検査(1996)

     

                        排水処理センター  藤原 勇

1,概略

 山口大学吉田地区には,雨水,生活排水(食堂,学寮,養護学校のそれを含む)および実験排水洗浄のそれぞれ独立した管路が設置されている.雨水は直接神郷川や九田川に流れている.また,実験洗浄排水は途中pHのチェックを行って以上がなければ生活排水で活性汚泥法により処理し,九田川に放流されている.その,放流水について,水量,pH,COD,濁度,排水量を監視する装置が設置されており,自動計測が行われている.

 構内には他に九田川に注ぐ水田潅漑水路と事務局前を通り正門脇で九田川に合流する”平八溝”と呼ばれた小川がある.

 分析化学・無機化学研究室は,構内で生じる排水や平八溝等の水質の実態を知り,また,構内から出ていく水の九田川の水質に与える影響の有無をも知る目的で,年1回,定められた地点にいおて,2時看護と,24時間に渡る採水検査を長年継続してきた.排水処理センターでも発足以来その調査に協力しており,合同で調査を行った.1996年の結果を示す.なお,今回の測定方法の24時間環境分析は最期となった.実は,吉田地区生活排水が公共下水道に接続となるからである.今後,排水処理センターの生活排水の処理状況のモニターはできないが,他の手段での山口大学の構内の水質調査は可能であろう.

2,調査年月日

 1996年5月17日 AM 10:00 ー 18日 AM 10:00

3,検水の採取地点(図1参照)

  地点A : 実験洗浄排水施設への流入水

  地点B : 生活排水処理施設への流入水

  地点C : 上記で処理した排水(塩素滅菌直前の排水)

  地点D : 正門脇のいわゆる”平八溝”の水

  地点F : 平八溝の流入口より上流の九田川の水

地点G : 生活排水口より上流(直前)の九田川の水

  地点H : 生活排水口より下流の九田川の水

4,測定項目

 水温,流入水,pH,SS,COD,  DO, 陰イオン界面活性剤およびリン酸,塩化物,アンモニウム,硝酸,亜硝酸の各イオン,測定には主にJIS工業排水試験法(K0102-1981)に従った.硝酸イオンの定量はイオンクロマトグラフィーにより行った.

5,結果及び考察

 今回の測定も天気に恵まれ,測定の前日も雨が降らず.この測定は,排水処理センターの通常の状況をよく反映したデーターを与えると考えている.

実験排水(地点A)では,実験に伴い,SS,COD,硝酸が増加している.一方,生活排水流入口(地点B)では昼間の人の活動に伴ってSS,COD,硝酸,陰イオン界面活性剤およびリン酸,アンモニウム,亜硝酸が増加しているた.この水が生活排水処理施設にぽいて浄化されていることは地点CのSS,COD,陰イオン界面活性剤,アンモニウムイオン濃度が減少していること,および硝酸が増加していることからわかる.正門脇の水(地点D)では昼間のpHおよびDOの増加が見られる.これは,植物の活動に伴う光合成からのCO2の量の変化も考えられる.特に昼間は,飽和溶存酸素以上の濃度が観測された.また,地点Dの亜硝酸の濃度は過去のデーターと比べて一桁も多く値が観測された.これについては詳しいことは不明である.

 九田川の水質に対する生活排水の影響について相関マトリックスを用いて検討した.生活排水処理水(地点C)と生活排水口より下流の九田川(地点H), 正門脇(地点D)と生活排水口より上流(地点G)の相関の値が相対的に大きいことが観測された。地点Dと地点Gについては,正門脇の水が九田川に流れるため,正門脇の水質の影響を多く受けて相関の値が大きくなっていると考えられる.地点Cと地点H 間の相関について時間経過の点を考えると、20:00の値が、2:00の値より大きくなっている,これは生活排水処理施設からの20:00の流出量が22:00よりも多いことまた,九田川の流量が少ないことから処理水の混入による影響が出やすいと考えられる.地点Cから地点H 間の相関をもたらす原因については,地点Hの硝酸イオン濃度は地点Gの値の約8倍になっていること,さらに、地点Hのリン酸イオン、アンモニウムイオン、塩化物イオンが地点Gの値のそれぞれ約7倍、2倍、2倍となっている.これのイオン濃度が相関値を高くしていると考えられる.

 排水処理センターには,濁度計およびCOD計による処理水(地点C)の連続測定装置がある.今回の分析結果と濁度計およびCOD計の相関を比較してみた.濁度とSSの相関を図2に示し,CODの分析結果とCOD計の相関を図3にそれぞれ示してみた.いずれも,高い相関があるとは言えない.これは,濁度計もCOD計も0-50ppmの範囲で相関係数が設定してあるからである.しかし連続測定装置の値からおおよそのCOD,SSの値を知ることができる.

 今回は,新しく水の硬度(主にMg, Ca)を測定した.EDTA滴定によりMg, Caを測定しCaSO4として換算したppmで示した.生活排水に入ってくる硬度は,川の水に比べて高い価が観測されている.