おもしろプロジェクト『山口大学環境整備改善計画』を実行して

   教育学研究科 修士課程2年  細川 邦隆

 私たちのプロジェクトは、山口大学の環境、設備などにおける問題点を改善するマスタープランの作成であり、山口大学をより良くするための案を、学生の視点から堤示することである。現在の山口大学の学内環境を見てみると、改善すぺき問題点が山積している。例えば学内交通問題は、門と交通路・駐車スペースの機能的関係の欠如など物理的な環境整備の遅れに起因している。これは、大学内の各学部が個々ばらばらに計画を実行し総合的な大学環境の整備を行っていないためだと考えられる。プロジェクトでは、これら学内の諸問題を学生の目で見直し総合的に大学環境を整備するためのマスタープランの作成を目指すものである。

 山口大学の現況の問題点をまとめてみると、教育環境、厚生環境、交通環境、自然環境の面で問題を抱えている。この各環境の問題は他大学では存在しているのか、またどのような現状であるかを調査した。他大学調査の項目は、校門の有無・形態について、教室・机・椅子・空調設備等について、駐車場の運営状況について、学食・学生寮・福利厚生施設について、植生について、の項目で行った。調査した大学は、関東・関西・中国・四国・九州地区の20大学である。調査項目ごとに感想を交えながらまとめてみたい。なお、調査した各大学には、調査の内容は公表しないことで協力していただいたため、大学名は伏せることをここで詫びておく。

1 校門の有無・形態について大学の顔とも言える校門が、山口大学ではその存在感が薄い。出入り口に付属していると言った感じである。他大学を調査した結果、3つのタイプに分けられる。 (1) 山大と同じく、出入り口に付属しているだけで、形態も似たもの。これが一番多かった。郊外に移転した大学は、ほとんどがこれにあたる。 (2) (1)のタイプの門にオブジェ作品を置いたもので、中国地方に一校存在した。(3) 旧制大学や、旧制高校などのころから存在する門を今も残している所。そこの大学のシンボルとして、親しまれている。

 門はそもそも構内と構外との結界としての意味を持つものであり学生をはじめとする学ぶ者、また教える者の意識を引き締める効果のためのものであるといえる.存在が,お座りになっている現在の校門は、改良することによって大学改革・大学自体のシンボルとなり,大学に属する者をはじめ広く地域・社会にアピールができると考えられる。シンボルとしての校門の必要性があるといえる。

2 教室・机・椅子、空調設備等について

 これらに関しては、他大学も国立大学なので、教室・机・椅子に関しては、まったく同じものを使用しており現状も山大と変わりはなかった。空調設備についても同様で、暖房設備のみ全教室にあるが、冷房は、ほとんどの教室にはなく、あっても大講義室だけという大学がほとんどであった。結果的には、今後増設を予定している大学、一切考えていない・予算の都合で考えられない大学、大講義室に設置したので、次は今のところ考えていない大学というふうに分けられた。四国地方の3大学は、学暦を変更し、前期試験が7月末に行われるため冷房設備が必要とされ、設置され今後も増設を予定している。また、教室の管理は各学部ごとに任せているため、大学によっては、医・理学部などには冷房設備が完備されていることもあった。いずれにせよ、現在のところどこの大学も、必ずしも学生を満足させる状態ではない。予算が限られているのはどこの国立大学も同じであるのに、設備投資への考え方に違いが上記のように現れる。予算運営に関わる方々の努力に委ねられるが、山口大学では、今後増設の予定を掲げていることと信じたい。また予定を早期に実現すべきである。

3 駐車場の運営状況について

 調査した全ての大学にいえることは、駐車スペースの不足である。市街地から移転してない大学のほとんどが、必要であるが増設するスペースが敷地内にないといった状態であった。また構内入り口に自動車を一旦停止させる遮断機を設置している大学が多くあり、許可証のかわりのカードを遮断機に挿入し入講する方法と、その傍の守衛係の操作で入講することができるシステムになっていた。公共の交通機関が発達した地域の大学(ほとんどの大学)では、学生の自動車での通学は許可されてなく、駐車スペースの不足に悩む大学では、教官や職員さえ自宅からの距離で許可が決定する大学もあった。九州地区の大学で唯一、駐車場の面積を誇る大学があったが、校舎から離れたところにあるため、満車にならず駐車禁止地帯に駐車している現状であった。山口大学も駐車スペースの不足に悩む大学の一つである。しかし、敷地面積は比較的に恵まれている。公共交通機関に乏しい山大は、十分な駐車スペースを確保することは必要不可欠であり、大学開放に際しても必要となることはいうまでもない。早急に駐車場の増設に着手することを堤案する。

4 学食・学生寮・福利厚生施設について

 学食については、他大学は生協が運営しており、まさに学生のための食堂といった感じが強く感じられた。生協による運営までは要望しないが、学生のための食堂といった雰囲気を取り入れるべきである。学生からの要望を積極的に取り入れる体制をとってもらいたい。また室内スペースの不足に対する屋根付きテラスの増設、老朽化による内外装の美観の悪さに対する改善としての改築の必要性を認め、対処すべきである。学生寮についても、完全個室の新々寮は入寮率が高く、入寮希望者も多い。九州地区では、個室の寮を持つ大学が目立った。山大も新々寮に立て直す、または増設する方向での検討を必要とする時期である。福利厚生施設の代名詞といえる大学会館は、各大学に様々な名称で存在している。またほとんどの大学では、キャンパスの中心部にこれを設置しており、学生を初めとする利月者にとって、通いやすい位置にあった。学食も兼ねた場合も多く、多くの学生が集える場所であった。山大の場合をみると、まず設置位置がキャンパス中心部から大きく外れ、学生の足も遠ざかりがちであり、学生たちの交流の場としての機能を果していない。今年度より生協の参入で、学生も足を運ぶことが多くなるであろうが、気軽に集うには距離か遠いことには変わりない。現状では、屋外の芝生や休憩所に集う姿を良く見る。ただし天候により集うことができない。そこで、多く学生が集っている、また集うことが可能な屋外に、雨避けになる屋根、テント類を設置することを堤案する。雨天でも快適に過ごせることで、授業準備や生徒間での情報交換など、より良い研究・教育環境が生まれるであろう。

5 植生について

 植生については、様々なものをバランス良く植えているといった答えが多く聞かれた。したがって、シンボル的な樹木はあっても、その本数が極めて多いということでなく、構内入り口近辺の目立つ所に植えてあるといった感じである。山口大学においては各学部単位での植生計画を実行しているようなので、小さくまとまっており、全体のまとまりが感じられない。現状の小さなまとまり同志を繋げて大きなまとまりにしていくプランが必要である。九州地区のl大学では、学長の呼びかけのもと、構内の植木に樹名プレートをかけるといった活動を行っていた。

 各大学を調査して山口大学の環境は、比較的良いものと思えた。例えば、構内面積は広く、自然も豊かである。市街地にある大学では、交通機関や商業地区に恵まれているものの、構内面積が狭く、新たに設備を設置するにも場所がない状況である。その点、山口大学は恵まれているが、有効利用されていないことが駐車場の問題などに代表されている。他大学では、土地がいるのだが構内にはスペースがないといった問題解決の方法が容易でない状況に対し、解決法はあるが手付かずでいる山口大学の現状は、それ自体が問題である。ここに上げた、問題点について解決は可能であり、改善すればより快適な研究・教育環境が再生されることは言うまでもない。大学が広く地域・社会に開かれた場となり様々な二一ズに対応できなければ、大学の存在価値がこの先確固たるものであり続けられるか危ぶまれるのではないかと思えてならない。そのためにも大学の研究・教育環境の整備改善は必要であり、早急に着手しなければならない課題である。