JAMSセミナー (コロラド)に参加して

理工学研究科修士課程1年 柿本 大典

 去る7月25日から8月2まで、アメリカでJAMSセミナーが開催されまた。JAMSセミナーとは日本数理財団(The Japan Association for Mathematical Sciences)が主催するセミナーのことです。その内容は、日本、アメリカ、その他の国々の数学、化学、工学等を専攻している学生が、主に環境問題に関してディスカッションをとうして交流を図って行こうとするものです。今回の参加者は、日本から14人、アメリカから約20人、メキシコから約10人、他に韓国、中国、ブルガリアなど各国からの参加者で大変盛り上がりました。

 私は大学院で環境工学を専攻していることもあり、今回参加することができましたが、参加するにあったっては何がなんだかわからないうちに決まりました。ある日指導教官の浮田教授から“君アメリカに行って来い”と突然言われ、アメリカに行けるうれしさのあまり、セミナーの趣旨を十分に理解しないまま返事をしてしまい多少後悔の念がありましたが、アメリカで2度とない経験ができたので、今思えばこの時の返事は正解だったと思います。

 7月25日金曜午後4時、成田空港から他の日本からの参加者と一緒にアメリカに向けて出発し、時差のため7月25日金曜の午前10時にサンフランシスコに到着しました。サンフランシスコでは時差を回復させるために、アメリカ側のスタッフの配慮で市内観光が予定されていました。空港でスッタフの1人と合流した後ホテルに向かいチェックインして、休む間もなく早速サンフランシスコの町を観光し、2日間過ごしコロラド州のデンバーに向かいました。デンバーで他のスッタフと各国の参加者と合流し、バスでセミナー開催地のクレストビュッテという町に行きました。クレストビュッテは、デンバーからバスで約5時間のところにある田舎町です。ここはロッキー山脈のふもとにあるスキーリゾート地ですが、今回は夏場に開催されたので人もあまりいませんでした。この地で1週間、ポスタープレゼンテーションやオーラルプレゼンテーション、ノーベル賞受賞者による講演、レクリエーションなどがありました。ホテルはコンドミニアムだったので各部屋5,6人に振り分けられ各国の学生と1週間生活を共にしました。

 セミナーでは午前に講演会、午後からオーラルプレゼンテーションとポスタープレゼンテーションがありました。講演会は期間中4回行われました。内容はCO2問題、農薬の健康被害、科学者の政治への参加などおもしろい内容ばかりでしたが、英語力が十分でない私は半分も理解出来てないと思います。環境の専門用語を知っていたので、他の日本人よりは理解しやすかったと思いますが、私はリスニングが苦手なので講演者が早口で聞き取れなっかたというのが本当のところです。今回の講演会は今まで私が経験したことのない雰囲気の講演会でした。みんな集中してよくメモを取る、私も何度も講演会には参加していますが、このような感じの講演は初めてでしたし、見習うべきところだったと思います。また、今回新鮮だったのが質問の仕方です。質問は手をあげて行うのが普通だと思いますが、講演会では講演が終わって30分の休憩の間に質問を紙に書いて講演者に提出します。この方法だと講演者も質問の答えをゆっくりと考えられるし、質問する方も要点を絞ることができます。なにより英語で話すのが苦手な日本人にとっては良い方法だと思います。講演が終わると講演者が4つの内容に関係したテーマを言います。その中から自分の興味があるテーマを選びそれについて学生同士でディスカッションをします。各国の学生は非常に積極的に発言し、他人の意見をよく聞き討論します。みんな時間を忘れて討論しています。私も発言しようと思いますが、英語力のなさが災いしてなかなか意見することができませんでしたが、下手な英語でも話せば必ず相手は真剣に聞いてくれます。このことは私にとって大きな自信になりました。

 オーラルプレゼンテーションは6つのグループに分かれてそれぞれ、環境と経済、健康、生態系、水質汚染、大気汚染、エネルギーなど自分のテーマごとに分かれて行われました。英語で発表するのは本当に難しいことです。発表に際しては日本で準備してきた原稿があったので、発音はうまく言えずともなんとか格好は付きましたが、発表のあとのディスカッションでは早口の英語で矢継ぎ早に質問されて、質問に答えられない場面もありました。しかし、グループリーダーや他の日本人のサポートもあり無事終了することができました。ポスタープレゼンテーションはオーラルと異なり1対1の場面が多くオーラルよりも話はしやすかったです。説明を求めてくる人以外にも、興味をもっていそうな人にはこちらから積極的に声をかけ説明もしました。また、すべてを通して言えることですが、ポスタープレゼンテーションにしてもオーラルプレゼンテーションにしても、各国の学生はプレゼンテーションが非常に上手です。慣れているためなのか他の人に理解してもらえるように非常に工夫して作っていました。日本人参加者のポスターなどをみると、僕のをふくめて工夫が足りないものばかりで、見栄えで大きく差がついていたような感じに思えます。

 期間中他にも、研究所の見学やマウンテンバイク、ラフティング、ハイキングなどのアウトドア活動もあり有意義な時間を過ごせたと思います。また、毎晩パーティーがありビールを飲んだり、踊ったり、語り合りあって交流を深めることができました。日が経つごとに英語の聞き取りにも慣れ、各国の学生と話もし易くなります。英語で交流することは難しいけれど、それでも通じるところはたくさんあります。

 帰国して1ヶ月も過ぎると、アメリカでの1週間が遠い昔のことのように懐かしく思いますが、セミナーが終わった後も今回の参加者でメーリングリストを作って、電子メールのやりとりをしています。セミナーでは話す機会の無かった人もたくさんいますが、でも世界中からメールが届くのはうれしいことです。もっと語学力をつけて今回できた友人達をいつか訪ねたいと思います。

 最後にJAMSセミナーに参加する機会を与えてくださった広中平祐学長と浮田正夫教授に心から感謝します。