ソーラープロジェクト

                         

                       工学部 3年  緒方 康博

 我々は、偶然にも同じ目的でプロジェクトに応募した当時2年チームと1年チームが合併しソーラーカー製作を行っています。毎週どっさりと出るレポートのすき間で図面を描き、ぎっしりとつまった講義の合間を縫っては工場にこもっています。時には、あまりの忙しさに目が回ることもありますが、夢を形にしていると言う充実感を感じています。

 そもそも、「何か自分達の手で物を作りたい」という思いから、このプロジェクトは動きはじめましたが、なぜソーラーカーなのか?『何かを作ろう』という思いと同時に我々はソーラーカーを思いつきました。今日、益々需要の増加するエネルギーに対して、それ以上に地球環境への配慮を求められています。現在、主なエネルギー源は石油ですが、残りの埋蔵量や二酸化炭素による温暖化問題を抱えています。期待されている原子力についても、その制御や管理の困難さと危険性は周知のとおり大きな問題になっています。それでは、我々は将来どんなエネルギーを利用しているのでしょうか、我々はその一つの可能性としてソーラーエネルギーを提案したいのです。もちろん効率面やコスト面から考えて現状では石油や原子力に匹敵するほどの大きなエネルギー源ではありません。しかし、安全でクリーン、しかも太陽さえあればエネルギーを取り出せるという魅力は大きいと思います。欠点であるコストや効率を少しずつ改善していけば、夢のエネルギーではなく十分に利用できるエネルギー源であると考え、その第一歩としてソーラーカーを製作し、走らせることによってその可能性に実際に触れてみたいと考えました。

 ソーラーエネルギーはコストが高く、気候により安定した発電が難しい、という指摘はありますが多くの夢を持ったエネルギーです。太陽からの光は1時間あたり10の14乗kWといわれており、現在人間が使っている地下資源(石油,原子力,石炭)エネルギーは、1時間あたり、 10の10乗kWなので、その1万倍のエネルギーが地球上に供給されていることになります。これは、現在市販されているソーラーパネルの効率はせいぜい15〜20%としても十分に大きなエネルギーであるといえます。また、ソーラーエネルギーの最大の利点は先にも述べましたが、光さえあればその場で、電気を作る事ができる点です。公園・ 広場や学校などの道路標識や時計、 防災センターの電源や、電気自動車の充電用など全国の地方公共団体による太陽光発電施設で利用されているのをはじめ、一般家庭でも家の屋根で発電し、余った電力を電力会社が買い取るという契約がかわされました。これで、電気が個人レベルで自給自足し他に転送できることが可能になりました。

 鹿児島県の屋久島ではゼロエミッション構想の一つとして島からの化石燃料の追放が掲げられています。総発電量の7割が水力であるこの島では、残りの3割を火力で補っていましたがその代わりに採用されたのが風力発電と太陽光発電です。さらに、その電力を利用し全ての交通機関も電気自動車にし、化石燃料の燃焼によって生じる二酸化炭素や有毒ガスをゼロにしようと計画されています。

 さらに、もっと大規模な環境計画としては、ジェネシス計画と呼ばれるものがあります。ジェネシス計画とは、ソーラーパネルと超電導ケーブルで世界的なエネルギー・ システムを作るということです。 (GENESIS=Global Energy Network Equipped with Solar cells and InternationalSuperconductor grids) ある計算では、西暦2000年の全世界のエネルギー消費量は、地球上に807Iのソーラーパネルを敷き詰めるだけで供給できるといわれています。もし、世界各地のソーラーパネルが超電導ケーブルでつなぐことができればたとえ夜間だとしても、雨が降ろうとしても電気が使える。つまり、ソーラーパネルのネットワークによって全世界でエネルギーを共有しようと考えられた計画です。インターネットによって情報の共有化が可能になった20世紀ならば、エネルギーの共有化が可能になる21世紀ではないでしょうか。

 これらの夢の計画が成功するためには、ソーラーエネルギーが効率やコストだけでなくまだまだ改善されなければならない問題がたくさんあります、その問題の多さにソーラーエネルギーに期待できないという意見があるのも事実です。しかし、この度ソーラーカーを製作し、触れることができた我々は、その体験をこれからの大学生活の中で生かし、問題に取り組んでいきたいと思います。