3.解説、話題

 包装容器の材質と分別回収

                           教育学部 和泉研二

 「朝もはよから父さんがー、牛乳屋さんにこえかけてー....」の歌を知っていますか。あの牛乳屋さんは、今も元気でしょうか? 私が子供のころ(昭和40年代ですが)、多くの家庭の玄関先に牛乳瓶受けの箱があったように思います。私の家でもそうでした。飲み終わった牛乳瓶を箱のなかに入れておくと、翌朝には新しい牛乳の入った瓶が届けられていました。今ではスーパーへ行っても、牛乳はほとんど紙パックに入って販売されています。紙パックが普及した理由は、軽い、価格が安い、運搬しやすいなどの点でガラス瓶より優れており、結局のところ、消費者に好まれ良く売れるからでしょう。日本の紙パックの年間消費量は、紙・板紙類の消費量の約1%(約25万トン)にのぼるそうです。紙パックに使用されるパルプは、強く良質のものです。紙パックを資源として再利用するため、スーパーなどで分別回収が行なわれていることは、皆さんもご存じの通りです。しかし、回収された紙パックは、すぐにリサイクルの原料となるわけではありません。紙パックの表面には水漏れ防止等の目的でポリエチレンがラミネートしてあり、パルプの原料として再利用するためには、一旦これを剥がす必要があります。その分コストも高くなります。ドイツでは、飲料容器の74.5%以上を使用後に洗ってまた使える容器(リナータブル容器)にしなければならないことが、政令で定められています。大手の牛乳メーカーであるMilchwerke Thuringen 社は、1993年から四角柱型のポリカーボネート製リナータブル容器を採用し、回収・洗浄・再使用を実施しました。この容器は、紙パックのように軽く丈夫で持ち運びにも便利なだけでなく、100回近くの再使用が可能です。また、再使用ができなくなると、プラスチックの原料として再生利用されるため、廃棄されるものはほとんどないそうです。回収システムは紙パックの回収システムを利用できるでしょうし、ボトルの洗浄はガラス瓶のシステムを応用可能でしょうから、日本でもこのようなリナータブル容器が登場するかも知れません。期待しましょう。

 平成7年6月16日、「容器包装に係わる分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」、いわゆる包装容器リサイクル法が公布され、この4月1日からガラス瓶とペットボトルを対象に施行されました。「市町村は、容器包装廃棄物の分別収集をしようとするときには、厚生省令で定めるところにより、三年ごとに、五年を一期とする当該市町村の区域内の容器包装廃棄物の分別収集に関する計画を定めなければならない。」というものです。といっても、市町村が、しようとしなければ、あるいはしようとしてもできなければ、分別収集は行なわなくても良いということです。しかし、全国3233市町村のうち、2831(88%)の市町村が、法律の施行に合わせて何らかの取り組みを行なってます。表1および表2に平成9年度から13年度までの分別収集予定市町村数と回収予定量を示します。ここ数年間で、分別回収に取り組む市町村は、かなり増えることになっています。環境問題に対する住民の関心の高さを反映したものでしょう。しかし、現時点では、ペットボトルや紙パックの回収を行なっている市町村は、まだまだ少ないようです。

 山口市もペットボトルの分別収集は行なっていません。しかし、市に問い合わせたところ、平成11年程度を目安に分別回収を行なう方向で検討している、ということでした。また、紙パックについては、すでにスーパーなどと協力して市内の10箇所ほどで拠点回収をおこなっており、将来的には回収拠点箇所を増やす方向で、回収を進めたいというお話しでした。ちなみに、ガラス(無色、茶色、その他のガラスを分別)やスチールおよびアルミ缶(いっしょにまとめて出してよい)の回収は、現在でも行なってますよ! おまちがえなく。

 包装容器リサイクル法は、平成12年4月1日から、対象を段ボール、その他の紙、その他のプラスチックに拡大して施行されます。ガラスにしろプラスチックにしろ、排出時の分別が基本です。例えば、ペットボトル10万本につき塩ビボトルの混入が1本以下にまで分別されないと、ペットボトルはリサイクルできません。もっとも、処理の前段階で、X線や近赤外線を使って材質を識別し分離する方法が実用化されていますが、これからの消費者には、材質の知識と分別のマナーが、さらに求められることだけは確かでしょう。大学内での分別回収のありかたも、根本的に見直さなければならない時期のようです。

表1 分別収集取り組み市町村数(括弧内は、全市町村数3233に対するパーセント)

(厚生省資料)

表2 市町村の分別収集予定総量(単位:万トン)

(厚生省資料)