私の見たCOP3(地球温暖化防止京都会議)

工学部4年 大月 傑

 COP3(地球温暖化防止京都会議、正式には国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議、以下京都会議)が開かれてから1年が経とうとしています。先進国が温室効果ガス(二酸化炭素等)の具体的な排出削減目標を設定した京都会議の成果を経て、今年11月には、アルゼンチンのブエノスアイレスで4回目の締約国会議、COP4が開かれようとしています。
昨年12月初旬、私はこのCOP3を自分の目で見、会議の成果に何らかの影響を与えたいという思いで京都へ行き、NGO(非政府組織)の活動に参加しました。会場となった京都国際会議場には、150を超える国の政府代表者と、世界中のNGO、報道機関が集まっていました。

 会場では、毎日、各国の政府代表者たちがいくつもの会議を行っていました。全ての代表者が会して決議を行う会議の他に、利害を同じくする国がグループを作り、それぞれが事前の打ち合わせのための会議を行っています。これらの会議には、公開されたものと非公開のものがあり、NGOや報道機関は、公開された会議のみ傍聴することができました。
 NGOは会場にブースを設け、資料を配付したり、ワークショップを開催して、参加者に自分たちの調査・研究に基づく提言を広めていました。特に政府代表者に対しては、会議以外の時間に積極的に近づき、具体的な提案も含めた交渉や説得(ロビイング)を行います。NGOはこうした活動によって間接的に会議に影響を与えていました。
 NGOには、WWFやグリーンピースなどのいわゆる環境保護団体の他に、原子力産業の国際的な提携組織や、損害保険会社など多国籍企業の立場から活動する団体もありました。
 こういった、公式非公式の、多様な議論と政治的な駆け引きが展開される中で、会議は決議へと至ります。

 まず、私が会議を見て感じたのは、地球環境問題の解決という目的の前に立ちはだかる、国家間の利害の対立でした。私は、京都会議について漠然と抱いていた、国連とNGOの主導による地球社会への幕開けといった夢から覚まされ、各国が自国の経済力のために駆け引きする国際政治の現実を目の当たりにしました。事実、会議が始まって何日もの間、途上国に対して同等の負担を求める先進国と、これに対する途上国の反発で、会議はほとんど何も決まらないまま過ぎたのです。

 一方、会場の外では、NGOや市民団体によって、毎日いくつものテーマ(例えばエネルギー、食糧、廃棄物、ライフスタイルなど)でシンポジウム、コンサート、パレードなどの会議やイベントが行われていました。私が確認しているものだけでも、11月30日〜12月9日の10日間に76の会議やイベントが行われていました。
 COP3の会場に入場できるNGOは、事前に条約事務局に登録の手続きを行ったNGOに限られ、登録のできなかったNGOは入場できませんでした。こうした会議やイベントは、会場の外にいるより多くの人たちにCOP3に関する情報を提供し、議論の場をつくり、より多くの人たちによる、合意形成と意思の表明を促していました。
 私も、これらの会議やイベントに参加し、国内外の各地から京都に来ている人たちと議論し、交流を深めました。

私が参加したものを挙げると
(1)「国際市民会議 持続可能かつ平和なエネルギーの未来」
 主催:原子力資料情報室、地球の友・ジャパン 
(2)「CO2削減―CASAからの提案」
 主催:CASA(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議)
(3)*「ゼロ・エミッションのエネルギーシステム〜木材を使った小型熱電併給システムの可能性を探る」 主催:里山研究会
(4)「全国NGO活動交流会」 主催:気候フォーラム
(5)「市民エネルギー自給の試み」 
 主催:市民フォーラム2001、自然エネルギー推進市民フォーラム
(6)「地球ラブラブフェスタ」 主催:SCOP(Student Action for COP3)
(7)「京都で決めよう!市民大行動〜地球温暖化防止アピールとパレード」
 主催:気候フォーラム
(8)「タイムマシーン企画」 主催:Cool Earth キャンペーン
 などがあります。

 これらの会議やイベントに参加して、日本と世界のNGO違いや、NGOと政府の認識の違いを感じました。
(1)では、ドイツのOeco Institute(エコ研究所)が、市民によるエネルギー管理技術(省エネルギー技術)を開発し、これを途上国の政府に提供することで、途上国の省エネルギーを促進しているということを聞きました。彼らはこういう活動を背景に、各国政府に対して説得力のある提言を行うことができます。
(2)では、日本のCASAが、日本の市民のライフスタイルの変化を詳しく分析し、具体的な市民の行動によって、国内の二酸化炭素排出量が、政府の試算よりも大幅に削減できるという研究成果を発表していました。(3)、(5)でも、各地の自治体や個人が行っている、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー利用に関する事例紹介を行っていました。これらは、日本の市民あるいは政府への提言としては有効ですが、日本以外の国との関係は対象にしていないと思います。
 また、(7)は市民による市外パレードを行い、(8)は学生によるCOP3会場前でのパフォーマンスを行うことで、日本政府や各国政府へ市民の願いを伝えることを目的としていましたが、その盛り上がりと、日本政府の消極的な行動との差が大きく感じられました。

 COP3の日程が進むにつれて、私は自分が参加した取り組みがCOP3の成果にどのように反映されてきたか、ということが気になりました。会議は未だ具体的な成果を出していなかったからです。
 会議の最終日に、かのアメリカのゴア副大統領が京都入りし、会期が1日延長され、徹夜の会議の末にようやく、先進国の温室効果ガスの排出削減目標が決まりました。
 日本の市民とNGOの行動が日本政府にどれだけ影響を与えることができたのか、世界中のNGOの提案がCOP3にどれだけ反映されたのか、という疑問は残りました。

 一方、先進国の政府の消極性と、国家間の対立が問題の解決を遅らせることを見て、自主的に行動する市民と、国の利害を超えて行動するNGOが、地球環境問題の解決により大きな役割を担っていくだろうと思いました。

 COP3について、多くの疑問や問題に触れた10日間でしたが、日本中から、世界中から自己負担で京都に集まり、市民としてCOP3の成功のために努力した多くの人たちと触れ合い、その疑問や問題に再び向かい合う元気を得た10日間でもありました。