学生のごみ処理と教育            教育学部 山本 善積

はじめに

 この間、地域でも大学でもごみ処理方法が変更されてきました。地域では容器・包装ごみのリサイクルがすすめられています。大学では昨年7月から焼却をやめて山口市の処理に委ね、リサイクルについても山口市にあわせて取組が開始されました。学生にとってはこれらの変更は、ごみを減らす杜会的努力を認識したり、ごみ間題について考える機会として重要です。しかし、地域の人々からは学生のごみの出し方、分別方法など地域でのごみ排出に関する苦情も耳にします。確かに学生の出身地は様々であり、出身地でのごみ処理方法との違いにとまどっている学生もいます。それだけでなく、学生のもう一つの生活の場である大学でのごみ処理やごみ教育が地域社会の‐一員としで地域のごみ対策に参加していくにふさわしいものになっているかどうかも点検してみる必要がありそうです。
そのために、学生の居住地でのごみ排出と大学でのごみ排出の状混及び意見をアンケート諏査でつかんでみることにしました。授業で個人的に行った調査であり、学生全体の実態を反映できていませんが、その結果を紹介し、上記のことを考えてみます。なお、調査は1999年6月に行ったもので、理学部25名、農学部35名、教育学部112名、あわせて172名(主としてl‐2年生)から回答を得ました。

1.居住地でのごみ排出
 住まいでのごみの仕分け方、地域のステションヘの出し方、リサイクルの経験、ごみの区分や出し方の認知、の4点について質間しました。
 まず家庭ごみの仕分け方では、アパート居住の学生を中心に、可燃ごみ、不燃ごみ、缶・ビンの3種類に分けている学生が半数以上ですが、資源ごみを分別しているのは2割以下と少なく、缶・ピンを分別していないアパート学生も4人に1人存在します(表l)。
 アパートや寮に住む学生の場合、ほとんどがアパート・寮に設置されたごみ置場に出しているだけで、自分でステーションに持っていく学生は2割程度しかいません。缶・ピンの扱いがわからない学生も見られます(不燃ごみとして出したり、自販機の回収容器に返却しているようです)。このように地域のごみ収集や分別回収に直接ふれている学生はわずかで、ほとんどが地域のごみ現場を経験していません(図1)。それは寮生や自宅生でも同様です。
 自治体で収集されているもの以外のリサイクルについては、アパート居住の学生でも7割が過去に何らかの経験をしています。多いのは古紙回収やトレイ等の店舗回収で、これには一人暮らしをはじめる以前の経験も含まれています。しかし、3割の学生は過去にも全くリサイクルの経験がなく、最近の経験だけを見ればもっと多くなると思われます(図2)。日常的にリサイクルをしているのは、資源ごみを分別していると回答した2割以下の学生と推測できます。
 ごみの区分や出し方を知らない学生が少なくありません。アパートや寮への入居時に説明があったと回答したのが4割、自治体の広報なとで知っているものも含めて一応知っていると応えた学生は6割で、4割の学生は正碓には知らないと回答しています。寮生や自宅生の場合も同様です(表2)。
以上のように、学生の多くが地域のごみステションとも自治体や地域のリサイクル活動とも関わりをもたず、ごみの区分や出し方も知らない状況です。いわば、地域のごみ現場から切り離されて、住居内だけのごみ処理になっているのです。しかも区分などがわからないとなれば、適当に処理されていると考えられます。

2.大学でのごみの扱い
 もう一つの生活の場である大学ではどのようにごみを扱っているでしょうか。1週間に捨てたごみの種類、その扱い方の認知、ごみ処理に関する意見の3点を質間しました。
 1週間に大学で捨てたごみでは空き缶、弁当ごみ、その他の容器包装ごみ(紙マップ、袋類など)、用紙・紙屑が多く、いずれも半数以上の学生が捨てたと回答しています。ペットボトルも2割以上の学生が上げています。このように、空き缶、弁当がら、紙コップ、ペットボトルなど容器包装ごみが多いことがわかります(図3)。これらのものは一部がすでに自治体で分別収集され、ペットポトルなどもリサイクルが始まっています(山口市では来春から予定)。間題の一つは弁当ごみや用紙類です。これらは大学の特性ごみとも言えるものであり、大学での対策が求められます。
 ごみの捨て方は昨年7月から少し変わりました。共通教育棟や学部の「ごみ置場」には、可燃ごみ、不燃ごみ、空き缶・空きビンのごみ箱が置かれ、分別に関する注意が掲示されています。それ以外に、所々にペットボトルの回収箱や乾電池の回収箱が置かれています。これらのごみ箱への捨て方については、1回生と2回生以上の学生とで認知状況がやや違っています。l回生はオリエンテーションな・どで説明を受けたり掲示物を見たりして、およそ半数が知っていると回答していますが、そのように回答した学生も含めて、正確には知らないとの回答も6割ほどあります。2回生以土では知っているとの回答が少なく、しかも掲示物で知っているだけです(表3)。学生には周知ができていません。また、ごみ箱の種類も各「置場」で不統一があったり、ペットボトルや乾電池の回収箱の設置場所もわかりにくい状況で改善が必要です。
大学のごみ処理の現状をよく知らない学生が多いので、対策に関しても明確な意見をもてないのが実情です。参考までに回答された意見を示せば、今のままでよいとの意見が47%と多く見られますが、使い捨てやムダ使いをなくしてごみを減らす(33%)、紙やプラスチックなど分別の種類を増やす(24%)といった改善意見も同じ程みられます(複数回答)。

3.大学の対策課題
 以上の調査結果からわかったことを、対策としてまとめてみます。
 一つは、地域と大学でのごみの分別や排出のし方を学生に周知することが必要です。地域では排出やリサイクルの現場に関わっていない学生が多いので、大学が貴重な経験の場になっています。大学での分別・廃棄のし方を地域に連動させて、両方の周知をはかることです。
 二つ目は、リサイクルに関する教育と実践の必要です。地域では自治体による資源回収と居住者による集団回収などでリサイクルがすすめられていますが、学生はこれらに参加できていません。大学内に地域と同様なリサイクルの体制をつくり、教育とあわせて実践ができるようにすることが必要です。
 三つ目は、リサイクルを含めた大学特有のごみへの対策が必要です。大学では弁当ごみや紙ごみなどが大量に排出されます。これらは使い捨て、ムダ使いの目立つごみなので、リサイクルや減量対策が求められます。
 なお、これらは大学で検討されるべき対策課題の全てではありません。その一部にすぎないことを言い添えておきます。