廃棄物処理について      医学部附属病院 看護部  宗内 由紀子


はじめに
 医療に関連して発生する廃棄物のうち、社会の環境安全を脅かす化学物質や、感染性廃棄物が問題となり、これら有害廃棄物が適切に処理されているかが、社会問題となっている。
 病院から出る感染性廃棄物の処理について、厚生省は1989年11月「医療廃棄物処理ガイドライン」を発表し、これに基づいて処理するように指導したが、病院から出される廃棄物は、すべて感染性があるかのように誤解され混乱が生じた。
 現在は前記のガイドラインが廃止され、新に「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」として1992年8月に通達されている。
これに基づいて、山口大学医学部・附属病院の廃棄物の処理が1998年4月に改定され行われているが、その現状と問題点について考える。
1.廃棄物の処理とは、廃棄物が発生してから、最終的に処分されるまでの行為、すなわち廃 棄物の「分別」、「保管」、「収集」、「運搬」、「再生」及び「処分」までの一連の流れの行為をいう。
 またこの「処分」には、廃棄物を物理的、化学的、生物学的な方法により無害化、安全化、安定化する為に行う「中間処理」と最終的に自然界に還元する事を意味する「最終処分」 (埋め立て、海洋投入処分)がある。
2.山口大学医学部・附属病院の「廃棄物の分別・処理方法及び処分流れ図」を図1.に示している。
3.医療機関からの廃棄物の種類
医療機関からの廃棄物のうち、医療廃棄物は医療行為に伴って発生する廃棄物で、「感染性廃棄物」と「非感染性廃棄物」がある。
その他に医療機関には非医療廃棄物と分類されるごみがあり、図1.の分類の可燃物一般ごみと不燃物ごみである。ベッド数759床の入院患者の生活ごみと医学部・附属病院に所属する者の生活ごみ、業務上のごみである。
 これらを適切に処理処分する為にには、現場での一時処理の仕方に焦点が当てられる。 この分別・処理が非常に複雑となり、廃棄物の量も相当になり、様々な問題が生じて来た。各ナ−スセンタ−内の処置室には、最低9個の多様なごみ箱が、並べられている。ごみ箱の占めるスペース、形態、放置時間、ごみの道線を考えるえると感染防止上、美観上問題である。この処置室やデイル−ム、洗面所、汚物処理室などから出るごみはワゴン車に山積され各フロア−から、各々1日に約6回づつ廃棄物保管庫へ運び込まれる。またここでは、空ビンは手作業により飲料用ビンと医療用廃棄物である薬用のビンに仕分けされている。
 その他に、入院患者の給食に関連する炊事用ごみもある。
4.廃棄物の増加と処理費用(管理課施設管理の集計による)
  平成10年度に構内焼却した処分量は 794.2 t(2t積みトラック約397 台分)、業者委託したプラスチック類は 1,158,660 l(ドラム缶約5,793 杯分)、感染性医療廃棄物は 31t、電池類 0.1 tで、処分の為に要した費用の合計は13,493,458円である。
5.入院患者の給食に関連するいわゆる炊事用ごみについて
給食から出る炊事用ごみは一日に約250〜300 s、平成11年3月から画期的な処理装置が設置された。大きい野菜くず、燃えない物などの分別は必要であるが、炊事用生ごみを投入するだけで撹拌、発酵し、水と炭酸ガスに分解し排水される仕組みである。栄養管理室の炊事用ごみ置き場は清潔感のある場所になっている。
6.感染性のある廃棄物はバイオハザ−ドマ−ク付ポリ容器に密封、又ビニ−ル袋の口をしばることが原則である。また廃棄物処理に当たる場合、容器から飛び出さない、押し潰したり、中身を移し換えたりしないことが原則である。
 現状では、使用後の点滴セットの注射針を切り取り分別しているが、危険性も伴う為そのま 針専用容器へ廃棄する必要性もある。
平成9年度、職員係へ公務災害として届け出された血液汚染事故(針刺し事故)のうち、
 片付け,廃棄時の事故は6件(汚染事故全体の16.7%)、平成10年度は3件(汚染事故全体の9.3 %)である。事故原因となった行為は、容器より突き出した注射針で、一杯になった容器に蓋をするとき、後片付け時に容器へ捨てる時等である。
 その他収集、運搬に当たる委託業者の事故もある。
 事故防止は注意するだけでは0にならない。事故防止の為の体制を守り、各自が正しい分別・処理を徹底することで効果があがると考えている。
7.この分別・処理方法を1998年4月より開始し焼却炉から出るダイオキシン量は1月は0.46 ngであったが、同年7月は0.10ng(規制値 5ng)に減少している。しかし法改正に伴い現在は経過措置中であり、今後平成14年11月を目途に焼却炉は廃止の方向である。