l5.全国的な大学の環境保全と排水処理施設の動きについての雑感

                      排水処理センター長 林  謙次郎                      排水処理センター  藤原  勇

 教育,研究,医療活動等によって発生する廃液,廃棄物の適切な処理は各大学,研究機関,病院等における共通の課題で,これらを安全かつ完全に処理することは大学にとって課せられた使命といえる。しかし,多種類の廃液,廃棄物が多様な形態でしかも多くの個所から排出され,量的にも一定しないため,その処理は簡単ではない。 このため国立大学の廃棄物処理施設の現場で苦労されている教職員の間に,処理技術ならびに管理,運営の諸問題に関する情報交換,検討の場を持ちたいという空気が生れ,l979年ll月に「国立大学廃液処理施設連絡会」が発足し,併せて年l回研修会も開かれてきた。                                こうした活動を踏まえて昭和58年4月からは国立研究機関,工業工専も参加し,内容もこれまでの廃液処理から廃棄物処理全般に拡大することになり,またこれまでの任意団体から文部省承認の公的な団体に衣替えし,名称も「国立大学等廃棄物処理協議会」に改めた。さらにl985年4月には処理施設の設計,建設,運転ならびに分析機器の製作等を行っている企業も賛助会員として参加するようになった。また,直接廃棄物処理を担当しておられる教職員の方々を対象とした処理技術分科会が夏に開催されるようになった。                              l986年度も7月l4〜l5日に京都において第2回分科会が,ll月l9〜20日に名古屋において第4回総会,研修会が開催された。そのプログラムを次に示す。

   第2回大学廃棄物処理施設協議会 分科会

   昭和6l年7月l4日(月)l3:00〜l7:30

         l5日(火)9:00〜l2:00

  京都堀川会館(京都市上京区東堀通下長者町下ル)

  挨拶:会長 高橋  照男

  特別講演 焼却炉から排出される窒素参加物について

                 京工繊大 若松  盈

  研究報告(l)緑茶を用いる水中の各種重金属類の捕集除去法

              奈良女子大 駒田 順子,木村 優

      (2)凝集沈殿処理装置を利用する染料・絵具混合廃液の重金属・有機物         同時処理

                  信州大 井勝  久喜

      (3)クロム酸一リン酸混合廃液の処理方法の検討

              東大 鈴木 良實,森永 眞一郎

      (4)有機廃液処理装置における排ガス処理能の評価

         岡山大 加瀬野 悟,藤元 教尊,高橋 照男

      (5)洗煙水中のフッ素処理一Ca F2共沈法

             京大 眞島 敏行.高月 紘

  パネルディスカッション『処理現場で困ったこと』

              司会 石井,加藤,平井

  パネリスト 阪大   矢坂 裕太 “処理現場で困ったこと”               静岡大  渡辺 春夫 “廃液処理で困ったこと”               埼工大  近藤 寛  “排水管理の現状について”              鳥取大  梅本 健志 “長時間曝気合併処理浄化槽の維持管理”        同志社大 田坂 明政 “同志社大学における廃液処理”

  第4回大学等廃棄物処理施設協註会総会・研修会

  昭和61年ll月l9日(水)・20日(木)

  愛知厚生年金会館

O総会

O展望講演 l.環境行政の一端を担当して     環境分析センター  本田正        2.廃無機薬品類の再資源化処理    名大・工     石井大道       3.大学における廃棄物処理と環境科学教育 京大・環保全セ 高月紘

O特別講演  環境と教育                名大・学長 飯島 宗 Oパネルディスカッション「廃棄物の再資源化処理」

 l.塩素系有機溶剤の蒸留・再資源化        岡大・工   森分 俊夫  2.焼却炉廃熱の利用              名大・省エネセ  浅井 勝  3.再資源化のためのフェライト化処理        東工大・理  玉浦 裕  4.重金属含有フェライトの再利用          日電・環境  辻 俊郎  5.写真廃液からの浮選法による銀の回収       三井金属  大下 祐司  6.写真廃液からの電解法による銀の回収       名大・工  興戸 正純                                  沖  猛雄 7.使用済み乾電池からの水銀の回収         千葉大・工  立本 英機 8.不用薬品の再利用について          早大・環保全セ  尾島 浩幸

 分科会では「処理現場で困ったこと」の題で各大学の現場での処理で,いつでもでてきそうな問題点が取り上げられていた。例えば生活排水による周辺地域への排水基準のクリアーのむずかしさ。また無機・有機廃液の混合物など処理困難な廃液が持ち込まれるなどの問題が取り上げられていた。                   総会では,名古屋大学省資源エネルギー研究センターの考え方に目を見張った。名古屋大学では廃無機廃液の再資源化処理を行っている。再処理方法は実験により生じた無機廃液を,重金属を個別に回収し,他の廃液と混合しないで,それぞれの廃液をl0〜50P毎に適切な化学的,または物理的処理をしたのち,太陽熱を利用した天日乾燥床にいれ,水分を蒸発させたのちそれぞれの重金属化合物や塩類等を回収してる。 この再資源化処理法は,各大学で行われている廃棄のための一括処理法としての例えばフェライト化処理法に比べて簡単であるばかりでなく廃棄物を生じないという利点がある。フェライト化処理法では,水による希釈,キレート樹脂による水銀イオンの除去,空気酸化などの工程を必要とし,処理するときの容積は原廃液の数l0倍となり,生成するフェライトスラッジ量は,含有金属イオンのl00倍程度にも増加する。これに対して名古屋大学の再資源化処理法は,有害重金属イオンを適当な化学形の化合物としてろ別仕手回収するものであり小規模で容易に行うことができる。      また最近,急速に需要がふえその処理が社会的問題となっている乾電池の水銀の回収について報告があった。回収方法は各種使用済み乾電池を減圧下で加熱し,比較的低温で水銀を蒸発させたのち冷却捕集して回収する方法であった。         その他各大学や企業はさまざまな廃棄物の問題点をかかえており,それに対して独自の研究がそれぞれに行われていることを聞いて自らの思いを昂揚させた。