研究科長挨拶
 
2010年4月
 




               





 

平成211214日開催の構成四大学法人間学長会議において、宮大が山大大学院連合獣医学研究科(UVY)から離脱し、平成224月からは宮大医獣総合研究科を設置することが正式決定した。UVYは、平成24月に西の4大学獣医学科が連合編成して設置され、本年度末で創立20周年となる。宮大はこのハタチを機に、UVYを自ら離脱し、別の大学院へと旅立つのである。山と海にあこがれ、飽くなき旅を続けた宮崎県出身の歌人若山牧水のように。

けふもまた こころの鉦を うち鳴らし うち鳴らしつつ あくがれて行く

 かの地へあくがれて、かの地へ行けば、またかの地への、あくがれが沸き、その赴きたきを押え難い。『あくがれ』の語源は、『在処』を『離る』、つまり、魂が今在る処を何かに誘われ離れ去って行くという意味で、そこから『思いこがれる』という今日の言葉が生れたそうだ。牧水は、自分の、あくがれを満たそうとし、それに妥協することがなかった。そして、あくがれ(夢、希望、憧憬)が強いほど、寂しさや悲しさが残ると、歌人伊藤一彦氏は講演で述べている(『よみがえる牧水 2007』より)。

昨年の本誌ではPDCAサイクルを紹介したが、今回も、UVY-Network誌で、自己点検・自己評価を実施したい。米国や日本の政権交代、世界的不況の中、大学へも資金減少の波が押し寄せているが、生き残りをかけて、私達も頑張っている。今年を振り返ると、多くの出来事があった。上記以外の主なものを挙げてみたい、

1)宮大の離脱後も学生定員等は現状維持するとし、諸課題について5月〜12月まで協議。7月には臨時代議委員会も開催(1〜12月)

2)学生の指導について第2副指導・単位数・授業科目・評価等を改善(2-9月)

3)新たに研究科憲章を作成(2月)

4)新しい研究科長選考規則による選挙を実施(1月)


5)中期目標の達成状況に関する評価において、教育・研究の全ての項目が「期待される水準にある」との評価(3月)

6)学生の研究科長表彰を新設し修了時に4名を表彰(3月)

7)農学部事務長を「研究科長補佐」に指名(4月)

8)23名(19名課程)の博士を送り、25名の入学者を迎える。過去最高の110名の学生数が10月入学6名追加・退学1名で、現在115名に(3〜10月)

9)岐阜連獣との意見交換会。入試制度や学位論文審査基準の違いを痛感(4月)

10)総務企画担当と学務担当による代議委員担当者会議。持ち回りの代議委員会時に研究科長・副科長も含めた代議委員による特別講義(4〜12月)

11)ホームページにE−ラーニングをアップし補助教材に(5月)

12)鹿大で共通ゼミナール開催。学生への交通費一部支援。共通ゼミナールの開催時期を検討し8月下旬に変更(22年度は8/25−28山口大学)。記録的集中豪雨により、山口県内各地に土石流災害発生、学内吉田地区一部断水(7月)

13)山大がベトナム政府、教育訓練省(MOET)との留学生交流協定締結。「インドシナにおける獣医学教育実態調査と相互交流」が山大国際化推進事業に採択され、3月4日にハノイ大学での交流会、及び山大へ同大学長・獣医学部長が来訪(9,12,3月)

14)「獣医学教育充実のための国際力を備えた臨床獣医学研究者の育成」が山大学長裁量経費で採択。3月20日に山大で国際シンポ(10,3月)

15)1回目の「機関別認証評価・訪問調査」実施。特に指摘事項無し(11月)

16)日本学術振興会の特別研究者が昨年の3名に続き、3名の採用決定(11月)

17)ボゴール農業大学(インドネシア)及びチュラロンコン大学(タイ)との学術交流協定締結へ(12月)

18)動物衛生研究所との連携大学院協定の準備開始(12月)

  ・・・・・など。詳細はUVY会議議事録等をみてほしい。

UVYは、これまで西日本唯一の獣医学の博士課程でしたが、来年度から宮大医獣大学院が加わる。移行期間中は、UVY在籍の宮大学生の指導については客員教員として、また代議委員会にはオブザーバーとして参加を願うが、今後、お互い切磋琢磨して獣医学教育研究の連携ができればと考える。

私達はこれまでも国内外で活躍できる獣医学博士を輩出し続けてきた。創立20周年を機に、UVY新構成三大学法人の山大、鳥大、鹿大も、明治維新発祥の地に根付く「挑戦と変革の精神」を受け継ぎ、オンリーワンの大学院へと「あくがれ」て行きたい





宮崎大学の「あくがれ」
  …もう一つの西の大学院誕生

   
 
    
         田 浦 保 穗