研究科長挨拶
 

「思いも新たに 

〜新研究科を目指した連合獣医学研究科の発展的解消〜」

連合獣医学研究科長
佐藤 宏

 連合獣医学研究科を巡る平成28年度の大きなニュースとしては、昨夏~初秋にかけて慌ただしく決定をみた本研究科の発展的解消をおいてないだろう。鳥取大学、鹿児島大学、山口大学の3機関が合意し、鳥取大学は岐阜大学との共同獣医学専攻の立ち上げ(平成31年度)、鹿児島大学と山口大学では「共同獣医学研究科」(平成30年度)をそれぞれの大学に立ち上げてあたらしいかたちの連携を図ることになった。これまでの四半世紀の取組みとその遺産を受け継ぎ、益々の発展をそれぞれの大学が責任をもって実施できる。長い教育課程を経て博士課程を最後に社会に飛び立つ青年の心持ちにも似て、自負と不安が交錯するなかで新たな道へ踏み出すのだと考えると、今回の決定も自然の摂理に合ったものかもしれない。組織としての「連合獣医学研究科」にはいい機会だったと得心し、大きなステップアップ、博士課程大学院教育の益々の充実に繫がることを期待したい。連合獣医学研究科は3大学として受入れる入学生は平成29年度限り(平成30年は鳥取大学所属のみ受入れ)であるが、在学生がいる間はこれまで通りに機能し、教育研究に支障が出ないように最大限に配慮されることが合意されている。

 さて、連合獣医学研究科として3大学で積極的に取組む事業として、グローバル化の中での学生と教員の研究展開力の育成である。学位審査は評価の高い国際学術誌での研究論文2報の公表を最低条件として実施されてきており、学生と指導教員の研究力自体には問題がない。博士号は研究力を証明するライセンスとして、学位取得後にこそ科学あるいは社会の要請する課題に継続して取り組んでいくことが期待されている。帰国留学生との交流機会を設け、研究科として修了生のフォローアップを進めると共に、世界各地で活躍する帰国留学生を通して、世界的な視野での地域の要請にも応えられる研究科でありたいと考えた。平成27年度から「UVY名誉フェロー」制度とともに「UVYフェロー」制度を設け、若手帰国留学生の研究力の継続と発展を目指した試みを進めており、今年度もそれぞれの大学での取り組みをもった。UVY名誉フェローであるDr. Tamas Ambrisko (オーストリア在住) には米国・欧州で認証された獣医麻酔専門医として麻酔学のセミナー(2部構成)を3大学で実施してもらい、大学院教育を更に発展させ専門家として活躍する修了生をもつ幸せを感じた。

 修了生を束ねる海外同窓会との連携も研究科の大きな課題であるが、今年はボゴール農科大学の学部長Prof. Srihadi Agungpriyonoの全面的な支援を受け、インドネシア国内の獣医系大学11校から学部長が参加する「International Symposium in Veterinary Science: Strengthening the collaboration between Indonesia and Japanese Veterinary Schools」を平成29119日・20日の2日間の日程で開催できた。3大学から教員8名、学生8名が参加するとともに、懐かしい帰国留学生の面々が自費で多数集まってくれた。日常的に共同し連携して地球規模の課題を話し合い、一緒に取組む契機となり、継続した協力関係を是非とも発展させていきたい。

 例年2月に開催される東アジアの獣医系大学の院生が発表機会をもつJoint Symposium (The 8th Joint Symposium of Veterinary Research among Universities of Veterinary Medicine in East Asia)も今年で8回目目を数えた。今年の開催地は台湾の国立中興大学であり、これまでで最大の10カ国25大学160名が参加し、keynote lecture 10題、Oral presentation 39題、Poster presentation 33題の発表があり、活発な研究交流の場となった。2会場での発表について、それぞれの会場から3名ずつ、計6名選ばれたベストプレゼンテーション賞に本研究科から3名が受賞する栄誉もあった。3大学の取り組みとして、コミュニケーション英語を毎週、ネイティブ教員の元で院生が学ぶ試みを続けてきた。今回の発表者はいずれも、口演による研究発表を楽しむかのように行えており、日々の取組みの成果も好成績に繫がったように思える。

近々に予定される新研究科立ち上げに当たり、連合獣医学研究科としての取組みが高く評価され、その継承と発展が強調されている。新・旧研究科は社会の発展と安定に貢献できる人材としての獣医系専門家(教育者、研究者、技術者)育成を担う重要な役割を果たし、果たさねばならない。連合獣医学研究科としてこれまでどおりの取組みを粛々と進め、円滑な移行に繫げていきたい。ひとえに関係各位のご協力をお願いしたい。


2017年4月吉日


 
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