HSF1はミトコンドリア不良タンパク質応答におけるミトコンドリアシャペロンの誘導に必要である


HSF1 is required for induction of mitochondrial chaperones during the mitochondrial unfolded protein response.

Arpit Katiyar, Mitsuaki Fujimoto, Ke Tan, Ai Kurashima, Pratibha Srivastava, Mariko Okada, Ryosuke Takii, and Akira Nakai.  
FEBS Open Bio (2020) in press. DOI: 10.1002/2211-5463.12863 (First published April 17)

細胞は不良タンパク質の蓄積に対処するために、いくつかの遺伝子発現を介する適応機構を備えている。細胞質・核の不良タンパク質に対する応答は、熱ショック転写因子HSF1によって制御される熱ショック応答であり、細菌からヒトまで進化過程で保存されている。一方、ミトコンドリア不良タンパク質応答(UPRmt)は、転写因子ATF5やCHOPによって制御されることが知られているが、その詳細については不明である。私たちは今回、HSF1がUPRmtに重要な役割を担うことを明らかにした。野生型マウスMEF細胞をミトコンドリアHSP90阻害剤、プロテアーゼLON阻害剤、電子伝達複合体I阻害剤を処理するとミトコンドリアシャペロンのHSP60、HSP10、mtHSP70が誘導されるが、HSF1欠損細胞では全く誘導されなかった。ミトコンドリアHSP90のノックダウンによるミトコンドリアシャペロンの誘導もHSF1依存的であった。HSP60の誘導はHSF1のコアクチベーターSSBP1も必要であった。これらの条件下で、HSF1は核移行し、三量体を形成し、リン酸化を受けていた。そして、ChIP法によってHSF1が顕著にHSP60/HSP10プロモーター上に集積していた。さらに、ミトコンドリア機能を調べたところ、HSF1ノックダウンは、ストレス条件下でミトコンドリア膜電位と酸素消費率をより低下させた。以上の結果は、UPRmtの際にHSF1がミトコンドリアシャペロンの誘導に必須であることを明らかにし、ミトコンドリア機能を保護することを示唆する。

https://febs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/2211-5463.12863