HSF4はレンズの発達過程において細胞の増殖と分化に必須である
M. Fujimot, H. Izu, S. Yamada, K. Kato, S. Yonemura, Y.
Tanaka, E. Takaki, S. Inouye, and A. Nakai. (2004) HSF4 is
required for normal cell growth and differentiation during mouse
lens development. EMBO J. in press.
熱ショック転写因子(HSFs) は、一群の熱ショック蛋白質を誘導する転写因子である。高等動物において3種類のHSFが存在し、欠損マウス解析よりHSF1とHSF2は、卵成熟や精子形成に関与していることが知られている。しかしその分子機構は明らかにされていない。最近、HSF4の遺伝子異常により白内障が起こることなどが報告された。我々は、HSF4と
HSF1の 両遺伝子欠損マウスを作製し、レンズ形成におけるHSFの役割を解析した。
HSF4欠損マウスは白内障を発症し、レンズ繊維細胞の異常を認めるとともにg-Crystallin蛋白質の発現が著しく低下していた。またレンズ上皮細胞の増殖の亢進と分化の促進を認めた。この表現型は、FGF-1,-4,-7
の発現の亢進をともなっていた。レンズを用いたクロマチン免疫沈降法の結果より、HSF4と
HSF1 がgF-CrystallinやFGF-7のプロモーター領域に直接結合し転写調節していることが分かった。興味深いことに両遺伝子欠損マウスでは、HSF4欠損マウスで見られたレンズ上皮細胞の異常は改善され、FGFの発現も野生型まで改善されていた。以上のことから、HSF4とHSF1はレンズ上皮細胞で拮抗的にFGF遺伝子の転写調節を行い、レンズ形成において増殖・分化に重要な役割を行っていることが分かった。