ジャック・モノーカンファレンスに参加して

 

 2008917日より21日まで、フランスのロスコフで開催されたジャック・モノーカンファレンスに参加した。本学会では、ストレス応答の中でも熱ショック応答にのみ着目し、熱ショック転写因子(HSF)のストレス・エピジェニクス・発生病気との関わりについて世界各国から100人程度の研究者が集まって討論が行われた。本研究室では、中井教授、藤本、大島の3人が参加した。

 HSF4は白内障の原因遺伝子であり、HSF4欠損マウスは白内障を発症する。また、HSF群の欠損マウスの解析から、感覚器の発生と維持に関与していることが分かった。本学会の招待講演で、中井教授はレンズ細胞においてHSF4結合領域がプロモーター領域以外のイントロンあるいは近傍の遺伝子から10 kb以上離れた領域に存在する傾向があること、HSF4結合領域周辺のヒストンH3K9の脱メチル化を促進すること、さらに熱ショック後に多くの近傍遺伝子が誘導され、HSF4HSF1による転写誘導を速やかに行えるようにクロマチン構造変化を変えることについて報告した。これらの解析から、HSF群が相互作用することで、遺伝子発現制御に関係していることが明らかになった。また、新規マウスHSF3による細胞防御機構を藤本が口頭発表し、白内障の原因であるHSF4変異体の機能解析を大学院生の大島君がポスター発表を行った。

 本学会では、Richard Morimotoが線虫モデルシステムを用いてHSF1を介する蛋白質ホメオスターシスと老化や神経変性疾患との関連を講演し、Lis JohnがショウジョウバエでのHSF1によるHsp70のヌクレオソームの変動について講演した。さらに、分子機構については、複数のグループからHSF結合蛋白質の解析の発表があり、HSFのユビキチン化やアセチル化も活性制御に重要であるという報告がなされた。現在、我々もHSF群の転写制御に関係した蛋白質の同定を試みており、今後、クロマチンの構造変化に関係する因子や遺伝子発現を正に、あるいは負に制御するコファクターを明らかにできることを期待したい。

(藤本充章)