免疫抑制剤であるシクロスポリンAが熱ショック応答を抑制する

HSF1 phosphorylation by cyclosporin A confers hyperthermia sensitivity through suppression of HSP expression.

Jingyu Shao, Beibei Han, Pengxiu Cao, Bingwei Zhang, Ming Liu, Danyu Li, Nan Zhou, Qiang Hao, Xianglin Duan, Yan-Zhong Chang, Akira Nakai, Yumei Fan, Ke Tan.

Biochim. Biophys. Acta - Gene Regulatory Mechanisms 2019, doi: 10.1016/j.bbagrm.2019.04.009.

細胞は、温熱ストレスなどのストレスにさらされると熱ショック応答を介して防御する。熱ショック応答はシャペロンとして働くHSP群の誘導を特徴とし、主に熱ショック転写因子HSF1によって制御される。HSF1はがんや神経変性疾患なとの病態と密接に関連しており、その制御の応用が期待されている。今回、中国河北師範大学生命科学学院の譚克先生らは当研究室との共同研究によって、免疫抑制剤であるシクロスポリンA(Cyclosporin A、CsA)が熱ショック応答を抑制することを報告した。これまでの我々の研究から、熱ショック応答はミトコンドリアSSBP1によって促進されること、CsAがSSBP1の核移行を抑制することを見出していた。今回、CsAのHSF1への作用を詳細に解析したところ、CsAがHSF1のSer303とSer307のリン酸化を亢進することで転写を抑制することをつきとめた。CsA処理したがん細胞は、温熱条件下でより細胞死が導かれることもわかった。本研究は、CsAを併用するがんの治療戦略の基盤となる重要な知見と考えられる。