田原君が学位を取得しました

田原正則君(泌尿器科学講座所属)が2022年3月に医学博士の学位を取得しました。学位論文は「精子形成過程における活性化転写因子1の精巣内局在と機能の検討」(Biology of Reproduction誌に掲載)です。

精子形成の過程は転写因子を含む様々な因子群によって厳密に制御されています。その中でも、熱ショック転写因子群(HSFs)と熱ショックタンパク質群(HSPs)は重要な役割を担うことが知られています。これまでに当研究室の研究から、CREB/ATFファミリー転写因子ATF1がHSF1のコアクチベーターとして熱ストレス時のHSPの発現を調節することが分かっていました(Takii et al, Mol. Cell. Biol. 2015)。今回、、マウスにおけるATF1を介したHSP発現調節と生理機能の解析を行いました。まず、ATF1は全ての組織で発現するが、特に精巣と脾臓で高い発現があることがわかりました。免疫組織学的解析から、ATF1は精原細胞の核に局在し、ATF1欠損マウスの精細管は全ての発達段階の精子形成細胞が存在していました。ATF1欠損マウスは不妊ではないが、成熟した精子の数も減少を認めました。以上の結果は、ATF1は精原細胞の増殖と精子の産生に重要な役割を担うことを示します。これまでにCREB/ATFファミリーに属するCREMが精子形成に必須であることは知られていたが、その過程にATF1が役割を担うことは知られていませんでした。本研究により、不妊の原因の一つとしてATF1遺伝子の異常の可能性が示唆されました