HSF1はStARを介するコレステロール輸送の恒常性を担う(医化学、泌尿器科学)

Oka S, Shiraishi K, Fujimoto M, Katiyar A, Takii R, Nakai A, and Matsuyama H.
Role of heat shock factor 1 in conserving cholesterol transportation in Leydig cell steroidogenesis via steroidogenic acute regulatory protein.
Endocrinology 158, 2648-2658, 2017. (selected as Editor's Choice). 
DOI: https://doi.org/10.1210/en.2017-00132

ステロイド合成の第一段階は、細胞質コレステロールのミトコンドリアへの輸送である。男性ホルモンであるテストステロンは、精巣のLeydig細胞で特異的に合成される。精巣の急激な温熱への暴露はその輸送に関与するStARの発現抑制を介してテストステロン合成を抑制するが、停留精巣や精巣静脈瘤などによる慢性的な温熱ストレス条件下ではテストステロン合成は維持される。今回、我々(医化学講座−泌尿器科学講座の共同研究グループ)は、その分子機構の一端を明らかにした。我々は、熱ストレス応答の鍵因子である熱ショック転写因子HSF1欠損マウスを用いて、停留精巣モデルを作製した。その結果、野生型マウスの停留精巣モデルではStARタンパク質の減少は一過性であるのに対して、HSF1欠損マウスではStARタンパク質の減少は4週間後も持続していた。停留精巣モデルでは細胞質シャペロンであるHSP110とHSP25だけでなく、ミトコンドリアシャペロンであるHSP60の発現が誘導されるが、HSF1欠損マウスでは誘導されない。StAR発現と一致して、HSF1欠損マウスの停留精巣モデルではLeydig細胞の細胞質コレステロールがより蓄積し、血清テストステロン濃度は減少することも分った。以上の結果は、HSF1-HSPs-StARを介する新たなステロイド合成の恒常性維持機構を示唆する。