大腸癌組織中のフソバクテリウムヌクレアタム量の違いにより大腸癌の予後が異なる(臨床検査・腫瘍学、消化器内科学、消化器・腫瘍外科)
大腸癌は、食生活と密接に関連しており、本邦でも食生活の欧米化が進み、大腸癌が増加した経緯がある。人の腸には約100兆個、約1,000 種類以上の腸内細菌が生息し、食生活の変化によっても違いがみられることから、大腸癌の原因のひとつと考えられている。
近年腸内細菌のひとつであるフソバクテリウムヌクレアタムが大腸腫瘍組織で増殖していることや大腸腫瘍発生・進展に関与すること、さらにフソバクテリウムヌクレアタム量が大腸癌患者生命予後に関係することが、相次いで報告され、注目を集めている。
我々は、このフソバクテリウムヌクレアタムの高感度測定法を開発し、日本人の大腸腫瘍患者の便検体においてフソバクテリウムヌクレアタムが有意に増加していること(図1)[1]、さらに大腸癌の進展に伴い、癌部のフソバクテリウムヌクレアタム量が増加し(図2)、その違いが大腸癌の予後と関連し(図3A)、とくに遠隔転移を伴う大腸癌の予後は、フソバクテリウムヌクレアタム量が多いほうが顕著に不良である(図3B)ことを報告した [2]。
図1:大腸腫瘍(腺腫、大腸癌)、健常者の便検体におけるフソバクテリウムヌクレアタムの検討. 健常者と比較し、有意に増加している。
図2:大腸癌切除後の癌以外の正常粘膜(Mucosa)と癌部(ステージI, II, III, IV)におけるフソバクテリウムヌクレアタムの検討. 進行がんに進展するほど、量が多くなる。
図3: A 大腸癌100例において、癌部のフソバクテリウムの量の差で予後が異なる。
B 大腸癌(ステージ4)においては予後の差が顕著である。
文献
1) Suehiro Y, Sakai K, Nishioka M, Hashimoto S, Takami T, Higaki S, Shindo Y, Hazama S, Oka M, Nagano H, Sakaida I, Yamasaki T. Highly sensitive stool DNA testing of Fusobacterium nucleatum as a marker for detection of colorectal tumours in a Japanese population. Ann Clin Biochem. 2017 Jan;54(1):86-91.
2) Yamaoka Y, Suehiro Y, Hashimoto S, Hoshida T, Fujimoto M, Watanabe M, Imanaga D, Sakai K, Matsumoto T, Nishioka M, Takami T, Suzuki N, Hazama S, Nagano H, Sakaida I, Yamasaki T. Fusobacterium nucleatum as a prognostic marker of colorectal cancer in a Japanese population. J Gastroenterol. 2017 Aug 19. doi: 10.1007/s00535-017-1382-6.