肝癌由来細胞株から誘導した癌幹細胞様細胞における転移能および上皮間葉系転換に関する解析(消化器・腫瘍外科学、先端がん治療開発学、山口大学工学部、国立がん研究所)

Nishiyama M, Tsunedomi R, Yoshimura K, Hashimoto N, Matsukuma S, Ogihara H, Kanekiyo S, Iida M, Sakamoto K, Suzuki N, Takeda S, Yamamoto S, Yoshino S, Ueno T, Hamamoto Y, Hazama S, Nagano H. Metastatic ability and the epithelial-mesenchymal transition in induced cancer stem-like hepatoma cells. Cancer Sci. 2018 Feb 8. doi: 10.1111/cas.13527.

 癌幹細胞は腫瘍内に少ない割合で存在する細胞であり、腫瘍新生能や転移能、再発、抗がん剤耐性において重要な役割を担っていると考えられている。分化した癌細胞に上皮間葉系転換(EMT)を起こすことで癌幹細胞が誘導できることが報告されており、その理論の下に当科では以前に独自の培地を用いて癌幹細胞様細胞の誘導に成功し、抗がん剤耐性について報告した(文献1-3)。今回は誘導した癌幹細胞様細胞の転移能を調べ、さらに癌幹細胞様細胞に対する網羅的発現解析を行った。
 肝癌由来細胞株であるSK-HEP-1を用いて通常の培地で培養した細胞とNSF-1などを含むsphere誘導培地を用いて得た癌幹細胞様細胞を超免疫不全マウスの脾臓に注射し、肝転移の形成を比較した。またflow cytometryやRT-PCRによってEMTマーカーやEMT関連mRNAの発現を調べた。さらに、次世代シークエンサーを用いて網羅的な解析を行った。
 誘導した癌幹細胞様細胞は親株と比較すると1×103細胞脾注において肝転移を形成した頻度が有意に高かった(図1)。間葉系マーカーであるVimentinの発現は誘導した癌幹細胞様細胞で発現が亢進しており、EMT促進転写因子であるTWIST1, SNAI1のmRNA発現も亢進していた。次世代シークエンサーを用いたRNA-Seqに続くGene set enrichment analysisにてhypoxia、EMTに関連する遺伝子群の発現が癌幹細胞様細胞で有意に亢進していた。最も一般的な癌幹細胞マーカーであるCD44についてisoform解析を行ったところ、extra exonを有するCD44vの発現亢進がみられたとともに、CD44- short tailの発現亢進も認めた。
 誘導した癌幹細胞様細胞は抗がん剤耐性に加えて高い転移能を示した。EMT, CD44v, CD44-short tailと癌幹細胞性質の関連が示唆された。

<文献>
1. Hashimoto N, Tsunedomi R, Yoshimura K, et al. Cancer stem-like sphere cells induced from de-differentiated hepatocellular carcinoma-derived cell lines possess the resistance to anti-cancer drugs. BMC Cancer. 2014;14:722.
2. Watanabe Y, Yoshimura K, Yoshikawa K, et al. A stem cell medium containing neural stimulating factor induces a pancreatic cancer stem-like cell-enriched population. Int J Oncol. 2014;45:1857-66.
3. Matsukuma S, Yoshimura K, Ueno T, et al. Calreticulin is highly expressed in pancreatic cancer stem-like cells. Cancer Sci. 2016;107:1599-609.



図1 マウス脾注モデルにおいて、誘導した癌幹細胞は高い肝転移能を示した。