癌間質におけるmiR221およびmiR222の過剰発現は大腸癌の悪性度と相関する(消化器・腫瘍外科学、川崎医科大学、東京医科大学)


Iida M, Hazama S, Tsunedomi R, Tanaka H, Takenouchi H, Kanekiyo S, Tokumitsu Y, Tomochika S, Tokuhisa Y, Sakamoto K, Suzuki N, Takeda S, Ueno T, Yamamoto S, Yoshino S, Fujita K, Kuroda M, Nagano H.
Overexpression of miR_221 and miR_222 in the cancer stroma is associated with malignant potential in colorectal cancer.
Oncol Rep. 2018 Sep; 40(3): 1621-1631.

 癌間質は癌細胞の悪性化に関わっているとされ、その働きが近年注目されている。しかし、癌進展に関わる癌間質のmiRNAプロファイルについては、まだ十分明らかになっていない。今回、miRNAアレイによる網羅的解析により、大腸癌の肝転移と関連する癌間質のmiRNAとしてmiR221およびmiR222を同定し、大腸癌間質におけるmiR221および222発現について検討した。 

 当科で切除された進行大腸癌のうち、肝転移を有する大腸癌(CRCwLM)6例と肝転移を認めない大腸癌(CRCwoLM)6例の原発巣からlaser capture microdissectionにて癌間質を切り出し、miRNAアレイによる発現解析を行った。抽出された候補miRNAは進行大腸癌40例でvalidation PCRを行った後に進行大腸癌101例のqPCRで癌間質における発現から高発現群と低発現群にわけ、2群における肝転移等の臨床病理学因子と予後について検討した。癌間質におけるmiR221および222発現の局在については進行大腸癌20例でin situ hybridization(ISH)を施行し検討した。

  miRNAアレイによる網羅的解析の結果、6つのmiRNAが候補として抽出され、validation PCRではmiR221およびmiR222はCRCwLMで有意に高かった。さらに進行大腸癌101例のqPCRによる発現解析では、miR221およびmiR222高発現群では低発現群に比較して肝転移と遠隔転移が多く、全生存期間が不良であった(図1)。ISHによる発現解析ではCRCwLMの癌細胞および癌間質、特に線維芽細胞にmiR221およびmiR222発現が強く認められた(図2)。

 以上の結果から、癌間質における2つのmiRNA, miR221およびmiR222の過剰発現は大腸癌進展に関連している可能性が示唆された。

         

図1 miR221およびmiR222高発現群では低発現群に比較して肝転移と遠隔転移が多く、全生存期間が不良であった。

               

図2 ISHによる発現解析ではCRCwLMの癌細胞および癌間質、特に線維芽細胞にmiR221およびmiR222発現が強く認められた。