ペプチドワクチン療法の効果を予測するバイオマーカーの同定-膵癌に対するペプチドワクチン療法の多施設共同医師主導治験の結果から-
(消化器•腫瘍外科学、先端がん治療開発、臨床薬理学、慶応大学、シカゴ大学、他)
Predictive biomarkers for the efficacy of peptide vaccine treatment: based on the results of a phase II study on advanced pancreatic cancer.
Shindo Y, Hazama S, Suzuki N, Iguchi H, Uesugi K, Tanaka H, Aruga A, Hatori T, Ishizaki H, Umeda Y, Fujiwara T, Ikemoto T, Shimada M, Yoshimatsu K, Takenouchi H, Matsui H, Kanekiyo S, Iida M, Koki Y, Arima H, Furukawa H, Ueno T, Yoshino S, Fujita T, Kawakami Y, Nakamura Y, Oka M, Nagano H.
J. Exp. Clin. Cancer Res. 2017 Feb 28;36(1):36. doi: 10.1186/s13046-017-0509-1
我々は以前、膵癌に対するペプチドワクチン療法の効果を検証するため、切除不能膵癌に対する一次治療としてGemcitabineにペプチド療法を上乗せした第II相試験を行った。その結果、末梢血中のペプチド特異的細胞障害性T細胞(CTL)反応が高度な症例ではペプチド上乗せ効果を認めた。
本研究では、ペプチド療法のバイオマーカーを探索して治療前に有効症例を選択すること、並びに抑制性免疫の探索から制御すべき抑制因子の同定を目的とし、治療前後の末梢血単核球表面抗原等の免疫学的解析を行った。その結果、CD4+ T細胞上に発現する programmed death-1 (PD-1)が高い症例ではCTL誘導が有意に不良でワクチン効果も低いことが示された。また治療後、CD4+ 並びに CD8+ T 細胞上にPD-1 あるいは T cell immunoglobulin mucin-3 (Tim-3) が高発現している症例では有意に予後不良であることが示された。
以上の結果から、CD4+T細胞のPD-1高発現はペプチド療法の除外基準とする、あるいは、抗PD1抗体や抗Tim-3抗体をペプチド療法に併用することで高い臨床効果が得られる可能性があることが示唆された。