ミトコンドリアを標的とする肺がんの薬剤併用療法の可能性
Ferroptosis inducer erastin sensitizes NSCLC cells to celastrol through activation of the ROS-mitochondrial fission-mitophagy axis.
Liu M, Fan Y, Li D, Han B, Meng Y, Chen F, Liu T, Song Z, Han Y, Huang L, Chang Y, Cao P, Nakai A, Tan K.
Mol. Oncol. 2021 Mar 6. doi: 10.1002/1878-0261.12936.
中国河北師範大学の譚克博士(元山口大学大学院生)らは、山口大学大学院医学研究科医化学講座との共同研究により新たな肺がん治療法の可能性を示唆する発見をした。フェロトーシスは、ミトコンドリアの鉄依存性過酸化脂質の蓄積とそれに伴って生じたROS(活性酸素種)による制御された細胞死の一つとして知られている。今回、肺がん細胞株NSCLCのフェロトーシス誘導剤エラスチンへの感受性が、多様な生理作用のあるセラストロールとの併用によって顕著に高まることを見出した。この作用は、ROS産生の亢進、ミトコンドリア膜電位低下、マイトファジー亢進、そして熱ショック応答の顕著な誘導を伴っていた。さらに、熱ショック応答の制御因子HSF1のノックダウンは、併用処理に対する肺がん細胞の感受性をさらに高めた。これらの結果は、肺がん患者へのエラスチンとセラストロールの薬物併用療法の可能性を示唆する。