The Mediator subunit MED12 promotes formation of HSF1 condensates on heat shock response element arrays in heat-shocked cells.
Okada M, Fujimoto M, Srivastava P, Pandey A, Takii R, and Nakai A。
FEBS Letters, 2023. DOI:10.1002/1873-3468.14617 (First published March 27)
細胞は熱ストレスなどのタンパク質毒性ストレスにさらされると、熱ショックタンパク質群(HSPs)を誘導することで適応する。この適応機構は熱ショック応答と呼ばれ、熱ショック転写因子HSF1によって主に転写レベルで制御される。活性化されたHSF1はHSP遺伝子プロモーターに存在する熱ショック応答配列(HSE)に結合し、コアクチベーターとして働くメディエーターを含む転写開始前複合体を集積させることで転写を促進する。一般に、転写因子及びコアクチベーターは液―液相分離によってプロモーター上に凝縮体を形成すると考えられている。しかし、HSP遺伝子プロモーター上でも同様かどうかについては、凝縮体が微小であるために十分な解析ができていない。
私たちは、ヒトHSP72プロモーター由来のHSEを多数連結したレポーター遺伝子をマウス細胞に導入した。このHSEレポーター遺伝子を持つ細胞に蛍光タンパク質mEGFPを融合したHSF1を発現させることで、熱ストレス条件下でHSF1凝縮体を可視化することに成功した(図)。この人工的なHSF1凝縮体は部分的に液体様の性質を持つ、すなわち液―液相分離により形成されていた。また、大腸菌から精製したタンパク質を用いた実験から、HSF1の天然変性領域(IDR)が相分離に寄与することも分かった。
さらにこの実験系を用いて、HSF1凝縮体の形成がコアクチベーターによって制御されるかを調べた。特に、熱ショック応答を促進するメディエーターサブユニットMED12に着目したところ、MED12のIDRはHSF1凝縮体に集積すること、そしてMED12ノックダウンはHSF1の凝縮体サイズを著しく抑制することが分かった。本研究は、HSP72プロモーター上のHSF1凝縮体を解析する実験系を提示するとともに、その凝縮体形成がコアクチベーターによって制御されることを示唆する。