熱ショック応答によるプロテオスタシス制御と老化関連疾患

藤本充章、中井 彰
医学のあゆみ Vol. 267, 919-926, 2018

<要旨>熱ショック応答はタンパク質の構造異常に対する細胞の普遍的な適応機構であり、タンパク質フォールディングを介助する熱ショックタンパク質(HSP)群の誘導を特徴とする。この応答を制御する熱ショック転写因子1(HSF1)は、細胞内に生じたミスフォールディングタンパク質に対処できる容量(プロテオスタシス容量)の主要な調節因子の一つである。HSF1の活性調節は老化や老化と関連する神経変性疾患やがんと関連することが知られている。最近、これらの疾患の病態がHSF1のリン酸化による翻訳後修飾、そしてHSF1自身の転写調節による発現制御と密接に関連することが分かった。さらに、HSF1複合体によるHSP遺伝子の転写の準備と誘導の基盤機構が明らかにされた。このHSF1複合体はDNA修復に寄与することも分かり、太古から存在するHSF1が広く細胞の恒常性を担う鍵因子の一つであることが明らかとなってきた。