熱ショック転写因子は線毛運動の維持に必要

E. Takaki, M. Fujimoto, T. Nakahari, S. Yonemura, Y. Miyata, N. Hayashida, K. Yamamoto, R. B. Vallee, T. Mikuriya, K. Sugahara, H. Yamashita, S. Inouye, and A. Nakai. Heat shock transcription factor 1 is required for maintenance of ciliary beating in mice. J. Biol. Chem. 282, 37285-37292, 2007.

熱ショック応答は、すべての生物に存在する普遍的な生体防御機構であり、一群の熱ショック蛋白質(Hsp)の発現を特徴とする。この応答を制御するのが熱ショック転写因子(HSF)である。HSF遺伝子群は個体発生過程においても生殖臓器や脳形成に重要で、さらにプラコードに由来する感覚器の維持にも必須の役割を担うことが分かっている。しかしながら、Hspの制御の異常がどのクライアント蛋白質(Hspの介助の必要な蛋白質のこと)の質的な、あるいは量的な異常を導くかは明らかにされていない。

 今回、我々は線毛運動を有する組織(鼻腔および気管の呼吸上皮、脳室上衣、卵管上皮)において線毛の鞭打ち運動を観察した。その結果、HSF1欠損マウスの組織では野生型に比べ線毛振幅頻度(CBF)が小さいことが分かった。これらの組織においてHSF1の標的遺伝子であるHsp蛋白質群の発現を調べた。その結果、野生型マウスの線毛においてHsp90の発現がきわめて高く、逆にHSF1欠損マウスの線毛のHsp90の発現が著明に低下していた。それと一致して、線毛に特異的に発現し、線毛運動に関わるαとbIVチュブリンがHSF1 欠損マウスにおいて顕著に減少していることを見いだした。さらに、Hsp90はチュブリンに結合し、その重合を促進することが明らかとなった。線毛運動による粘液線毛クリアランス機能は外的異物に対する最初のバリアーである。HSF1は、チューブリンの重合を促進するHsp90の発現を介して、その維持に必須の役割を演じていることが明らかとなった。