HSF1を介した温熱ストレスに対するマウス表皮細胞の耐性

C. Nakamura, Y. Nakamura, T. Gondo, E. Takaki, M. Fujimoto, S. Inouye, A. Nakai, and M. Muto. HSF1 is important for protection of mouse epidermal cells against heat stress. The Bulletin of the Yamaguchi Medical School, 1-2: 1-8, 2008.

生体は外的刺激に対し、恒常性を維持するために、遺伝子発現を介した多様な応答システムを備えている。そのうち生物に普遍的に存在する基本的生体防御機構の一つが熱ショック応答である。この応答を転写レベルで制御するのが熱ショック転写因子HSFである。HSFにより制御される最も重要な遺伝子群が、熱ショック遺伝子群で、その遺伝子産物が熱ショック蛋白質Hspである。

HSF1は、熱ショック応答および発生の過程に関わっている。これまでに、温熱ストレス下および通常の生育条件の表皮での熱ショック蛋白質の発現は確認されている。しかし、HSF1が、表皮における熱ショック蛋白質の発現量を制御しているかは不明である。我々は、マウス表皮において、主要なHspの発現を認め、その中でもHsp70とHsp27は表皮顆粒層に強く発現していることを確認した。HSF1欠損マウスの解析から、通常の生育条件下のマウス表皮において、熱ショック蛋白質群の発現はほとんどHSF1を介さないことがわかった。マウス皮膚を高温に曝すと、HSF1を介してHsp70の発現が誘導された。野生型と比較してHSF1を欠損した表皮はより脆弱であった。今回の結果は、HSF1は熱ショック遺伝子群の構成的発現には関与していないが、温熱ストレスによる熱ショック遺伝子の発現とそのストレスに対する耐性に必要であることが明らかとなった。