脂肪酸結合タンパク質FABP3が、情動に深く関与するドーパミンD2受容体の活性を制御する(器官解剖学分野)

N. Shioda, Y. Yamamoto, M. Watanabe, B. Binas, Y. Owada, and K. Fukunaga.

Heart-type fatty acid binding protein regulates dopamine D2 receptor function in mouse brain. J Neurosci., 30, 3146-3155, 2010.

記憶・学習・情動などは、高度に制御された神経細胞の活動によって生み出されるが、その活動は神経細胞内外の環境によって左右される。しかし脂質栄養や脳内脂質恒常性が、高次脳機能に影響を及ぼす分子基盤については、未だ不明である。本研究では、脂肪酸結合タンパク質(FABP)分子ファミリーの1つであるFABP3が、情動に深く関与するドーパミンD2受容体と相互作用を有すること、さらにFABP3が欠損したマウスでは、ドーパミン受容体の活性化状態に異常が認められることが明らかになった。我々の先行研究では、FABP3が必須脂肪酸であるアラキドン酸の脳内取り込みに関わることが判明しており(Biochemistry 2005)、FABP3が神経細胞内でアラキドン酸と結合し、直接ドーパミン受容体D2の活性化状態を制御している可能性が示された。本成果は、東北大学薬学系研究科福永浩司博士らとの共同研究によるものである。