局所脳冷却による異常てんかん放電と正常運動感覚機能への影響の検討(脳神経外科学分野)

 Cooling of the epileptic focus suppresses seizures with minimal influence on neurologic functions.

Fujii M, Inoue T, Nomura S, Maruta Y, He Y, Koizumi H, Shirao S, Owada Y, Kunitsugu I, Yamakawa T, Tokiwa T, Ishizuka S, Yamakawa T, Suzuki M.

Epilepsia, 53, 485-493, 2012.

  局所脳冷却に強力なてんかん放電抑制効果があることが報告されている。しかし正常脳機能に影響を与えずに発作を抑制できるかどうかについてはまだ解明されていない。そこで我々は正常脳機能に影響を与えず発作が抑制できる至適温度が存在するのか検討した。

 脳表に冷却装置、温度計、脳波計を埋没したfree-moving ratsを用い、脳表(sensorimotor cortex)にpenicillin G(1200IU)またはcobalt powder (Sigma, 8 mg)を注入することにより部分てんかんモデルを作成した。脳表を20℃、15℃、10℃に冷却し、発作頻度、てんかん性放電および運動感覚機能の変化を評価した。その結果、20℃以下の冷却によりてんかん性放電は明らかに抑制された。15℃の冷却により、非冷却時に比べ有為な発作頻度の抑制と神経機能(運動)の改善が認められた。しかし10℃の冷却により発作は著明に抑制されたが、神経機能の有意な悪化が認められた。さらに正常ラットにおいて脳表を15℃に冷却すると、運動感覚機能の悪化が認められた。

 脳表を20-15℃に冷却することにより運動感覚機能の温存とてんかん発作抑制効果が期待できるが15℃以下では正常神経機能の抑制が生じる可能性がある。この発作抑制と正常神経機能の乖離には皮質層(Ⅰ—Ⅵ)におけるneuronal connectionの差異が関与している。