血液脳関門と血液神経関門由来のペリサイトはGDNFを分泌し血液脳関門や血液神経関門のバリアー機能を高めている(神経内科学分野)

F. Shimizu, Y. Sano, K. Saito, M. Abe, T. Maeda, H. Haruki, and T. Kanda.

Pericyte-derived Glial Cell Line-derived Neurotrophic Factor Increase the Expression of Claudin-5 in the Blood–brain Barrier and the Blood-nerve Barrier

Neurochem Res., 37, 401-409, 2012.

  Glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF)やBrain derived neurotrophic factor (BDNF)が血液脳関門(BBB)や血液神経関門(BNB)に及ぼす影響は明らかではない.今回、我々が新たに樹立したヒトBBB構成内皮細胞株とBNB構成内皮細胞株を用いてGDNFやBDNFがBBBとBNBに及ぼす影響を解析した.

 ヒトBBB由来血管内皮細胞株(TY10)とヒトBNB由来血管内皮株(PnMECs)にGDNF, BDNFを作用させtight junction関連分子(claudin-5, occludin)の発現の変化をreal-time PCR法とウェスタンブロット法で検討し,電気抵抗値の変化を解析した.また,抗GDNF中和抗体をペリサイトやアストロサイトの培養上清に併せて作用させ,claudin-5蛋白量の変化と電気抵抗値の変化を検討した.その結果,GDNFを作用させるとTY10とPnMECsのclaudin-5量がmRNAレベル,蛋白レベルで増加し,電気抵抗値も上昇したが,BDNFを作用させても変化はなかった.脳や末梢神経のペリサイト培養上清に抗GDNF中和抗体を併せて作用させるとTY10とPnMECsのclaudin-5の発現が低下し,電気抵抗値が低下した.

 以上の結果から,GDNFはBBBとBNBのバリアー機能を増加させることが明らかとなり,脳や末梢神経のペリサイトが放出するGDNFがBBBとBNBのバリアー機能を高めていることが示唆された.