網膜色素上皮細胞における女性ホルモンによるコラーゲン収縮の抑制(眼科学分野)
Inhibition by female sex hormones of collagen gel contraction mediated by retinal pigment epithelial cells
Kazuhiro Kimura, Tomoko Orita, Youichirou Fujitsu, Yang Liu, Makiko Wakuta, Naoyuki Morishige, Koh-Hei Sonoda
Investigative Ophthalmology & Visual Science 55(4):2621-30. 2014
増殖性硝子体網膜症や加齢黄斑変性などの難治性網膜硝子体疾患は,二次的に形成された網脈絡膜での増殖性線維組織にて視力不良となることがある。特に網膜色素上皮細胞が中心的な役割を果たしており、この網膜色素上皮細胞(RPE)の繊維芽細胞様形態変化つまり、上皮-間葉系移行(EMT)が増殖性線維組織形成に重要な働きをする。性ホルモンは眼組織のリモデリングに関与しており、我々は特に女性ホルモンの17βestradiol、progesterone が組織収縮モデルのRPEによるコラーゲン三次元培養系におけるゲル収縮を抑制することを明らかにした。さらに、これら女性ホルモンはEMTマーカーのfibronectin、α-SMactinの発現を抑制すると共にタンパク質分解酵素MMPs抑制した。実際に増殖性硝子体網膜症の患者から得た増殖組織に、これら女性ホルモンの特異的受容体(ER, PR)の発現を確認した。
以上の結果から、性ホルモンの中で17βestradiol、progesteroneの女性ホルモンに網脈絡膜の増殖性線維組織形成および収縮に抑制作用がある可能性が示唆された。