低酸素による角膜上皮細胞のバリアー機能破綻に対するデキサメサゾンの保護作用(眼科学分野)

Protective effect of dexamethasone against hypoxia-induced disruption of barrier function in human corneal epithelial cells.

K. Kimura, S. Teranishi, K. Kawamoto, and T. Nishida.

Exp Eye Res., 92, 388-393, 2011.

 角膜上皮は、種々の外来因子からバリアーとして角膜あるいは眼球を保護し、そのホメオスターシスを維持している。外部環境の変化、特に低酸素状態は、角膜上皮に影響を及ぼし、しばしば上皮障害をきたす。これまでの我々の研究から、低酸素は角膜上皮細胞のtight junctionのZO-1の発現、局在に影響を及ぼし、そのバリアー機能を低下させる。今回我々は、デキサメサゾンがこの低酸素による角膜上皮細胞のZO-1の発現、局在への影響を阻害し、そのバリアー機能の指標となるTER (transepithelial electrical resistance) 低下を阻害することを明らかにした。さらにデキサメサゾンは、低酸素によるアクチンストレスファイバー及び接着斑形成亢進、Myosin Light Chain Kinaseのリン酸化亢進を抑制した。デキサメサゾンは、アクチン骨格の再編成を介してtight junctionへのZO-1の局在や発現を維持し、角膜上皮バリアー機能破綻を抑制することで低酸素による角膜上皮障害の治療薬として働きうる可能性が示唆された。