子宮筋腫のゲノムワイド DNA メチル化プロファイル解析(産婦人科学分野−医化学分野)
R. Maekawa, S. Sato, Y. Yamagata, H. Asada, I. Tamura, L. Lee, M. Okada, H. Tamura, E. Takaki, A. Nakai, and N. Sugino.
Genome-wide DNA methylation analysis reveals a potential mechanism for the pathogenesis and development of uterine leiomyomas.
PLoS One 8, e66632, 2013.
前川 亮、杉野 法広(山口大学大学院医学系研究科産科婦人科学)
我々は、子宮筋腫の発生・進展機序の解明を目的として、子宮筋腫はエピゲノム異常により発生するという新規の仮説に基づいて基礎的研究に取り組んでいる。子宮筋腫のDNA メチル化プロファイルをゲノムワイドに解析したところ、子宮筋腫特異的にDNAメチル化変異が生じ、mRNA発現の変化が伴う遺伝子が120個同定された。Ontology解析の結果,これらの遺伝子には cancer process に分類される遺伝子が最も優位に含まれていた。また、子宮筋腫はエストロゲンに対する感受性が高い腫瘍であるが、DNA メチル化異常のエピジェネティックな機構がエストロゲン作用を修飾し、筋腫の発生・発育に関与する可能性も示された。さらに、興味深いことに、子宮筋腫における低メチル化変異はX染色体で高頻度に生じていることが明らかとなり、この異常はこれまでに他の疾患で報告のない知見であり,子宮筋腫に特異的な現象であると考えられる。子宮筋腫研究の新しい視点として、エピジェネティクスの重要性が確認された。