静注で行う心臓選択的・心不全特異的な蛋白質フォスファターゼ1抑制遺伝子治療が遺伝性心筋症の心筋リモデリングを予防する(器官病態内科学—分子薬理学)

Heart Failure-Inducible Gene Therapy Targeting Protein Phosphatase 1 Prevents Progressive Left Ventricular Remodeling

Yosuke Miyazaki., Yasuhiro Ikeda., Kozo Shiraishi, Shizuka N. Fujimoto, Hidekazu Aoyama, Koichi Yoshimura, Makoto Inui, Masahiko Hoshijima, Hideko Kasahara, Hiroki Aoki, Masunori Matsuzaki 

PLoS ONE 7(4): e35875. doi:10.1371/journal.pone.0035875(2012)

 心臓におけるCa2+循環機能の低下は、重症心不全に対する新しい治療標的として注目されている。今回、我々は、低下したCa2+循環を改善させる方法の1つとして筋小胞体に関連した心筋細胞の蛋白質ホスファターゼ1β機能抑制が心筋収縮性改善に効果的であることを報告する。

 アデノ随伴ウイルスを改変し、心筋選択的かつ心不全状態でのみ発現する病態誘導型ベクター(AAV9-BNP-PP1βshRNA)を作成し、経静脈的に心筋への遺伝子導入を行った。MLPノックアウトマウスという心筋症モデルの心筋ではPP1βの発現は、心不全進行とともに30%増加するが遺伝子導入群では心不全進行とともに約25%低下し、病態特異的な遺伝子発現制御が可能であった。心筋細胞のCa2+循環の鍵となる蛋白ホスホランバン(PLN)のSer16リン酸化は有意に上昇し、心筋収縮性は3 ヶ月以上にわたって改善した。左室径も対照群に比べ心筋リモデリングに伴う心拡大が有意に抑制されていた。

 心不全誘導型遺伝子治療は今後重症心不全に対する新しい治療戦略として期待される方法である。