ゲラニルゲラニルアセトンは蝸牛における音響障害後の炎症性サイトカインを抑制する。(耳鼻科学分野—医化学分野)

Geranylgeranylacetone suppresses noise-induced expression of proinflammatory cytokines in the cochlea.

T. Nakamoto, T. Mikuriya, K. Sugahara, Y. Hirose, T. Hashimoto, H. Shimogori, R. Takii, A. Nakai, H. and Yamashita.

Auris Nasus Larynx, 39, 270-274, 2011.

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  熱ショック応答は、熱ショック因子(heat shock factor、HSF)によって転写のレベルで調節され、蛋白質フォールディングを介助する熱ショック蛋白質(heat shock protein、HSP)及び蛋白質分解を担う蛋白質の誘導を特徴とする。したがって、HSFは細胞の蛋白質ホメオスタシスの鍵となる因子である。それだけでなく、HSFは、脳、生殖器、感覚器などの個体発生と維持に重要な役割も担い、我々の研究を含む成果から、HSPの主要な制御因子であるHSF1が免疫•炎症反応の調節に必要であること、その一部はHSF1によるTNFa、IL1b、IL6などの主要な炎症性遺伝子の抑制によるものであることがわかっている(Inouye et al. J. Biol. Chem. 2004, 2007; Takii et al. J. Immunol. 2010)。

 我々は、内耳の音響障害の研究から、HSF1が障害を抑制し、熱ショック応答の誘導剤GGA (Geranylgeranylacetone)が障害を顕著に抑制することを明らかにしている(Sugahara et a. Hearing Res. 2003; Mikuriya et al. Brain Res. 2005)。今回、音響障害にともなって内耳の炎症サイトカインの産生が亢進し、それが熱ショック誘導剤の前投与により抑制することを明らかにした。それと一致して、聴覚の障害も抑制された。本研究は、GGAあるいはその類似化合物が将来的に内耳障害に対する有効な治療法になる可能性を示唆している。