大腸癌細胞においてJAB1は蛋白質間相互作用を介して非リン酸化STAT3の標的DNA結合能を制御する(器官病態外科学分野)

 西本 新、釘宮 成二、細山 徹、榎 忠彦、李 桃生、濱野 公一

Nishimoto A, Kugimiya N, Hosoyama T, Enoki T, Li TS, Hamano K.

JAB1 regulates unphosphorylated STAT3 DNA-binding activity through protein-protein interaction in human colon cancer cells.

Biochemical and Biophysical Research Communications, 2013 Aug 30, 438(3), 513-8.

  転写因子STAT3はIL-6刺激等によってリン酸化され、活性型STAT3となることが従来より知られているが、最近の研究により、非リン酸化STAT3も二量体の形成、核内への移行、標的DNA配列への結合、そして標的遺伝子の発現誘導を引き起こし、癌化において重要な役割を果たしていることが明らかになっている。今回、我々はヒト大腸癌細胞株COLO205において、JAB1および非リン酸化STAT3が核内に存在し、両者が蛋白質間相互作用することを見出した。さらにJAB1の発現をノックダウンしたところ、非リン酸化STAT3の標的DNA結合能は顕著に減少し、STAT3標的遺伝子であるMDR1, NANOG, VEGFの発現レベルも減少した。以上より、大腸癌細胞において、核内JAB1が非リン酸化STAT3の標的DNA結合能を正に制御していることが明らかになった。これらの知見は、新たな癌治療の開発に繋がる可能性があると考えられる。