脂肪酸結合タンパク質(FABP7)は、大脳皮質グリア瘢痕形成時のアストロサイト分裂に関与する

FABP7 expression in normal and stab-injured brain cortex and its role in astrocyte proliferation.

K. Sharifi, Y. Morihiro, M. Maekawa, Y. Yasumoto, H. Hoshi, Y. Adachi, T. Sawada, N. Tokuda, H. Kondo, T. Yoshikawa, M. Suzuki, and Y. Owada.

Histochem Cell Biol., 136, 501-513, 2011.

神経外傷に伴うアストロサイトの分裂によって形成されるグリア瘢痕は、中枢神経系の損傷や変性疾患の病態に深く関与する。脂肪酸結合タンパク質の一つであるFABP7は、神経幹細胞やアストロサイトに発現することが知られていたが、その機能の詳細については不明であった。

本研究では、免疫組織化学法を用いてFABP7が大脳皮質のアストロサイトのみならず、大脳皮質のグリア系幹細胞として注目されているオリゴデンドロサイト前駆細胞にも発現することを明らかにした。次に、FABP7ノックアウトマウスに対して、グリア系細胞の分裂(グリア瘢痕形成)を促す皮質損傷モデルを作成し、アストロサイトの数・分裂能を評価したところ、ノックアウトマウスでは野生型に比べて有意に低下していることが明らかになった。さらにノックアウトマウス由来の初代培養アストロサイトでは、分裂能の低下のみならず、オメガ3系脂肪酸の取り込みが低下していることが判明した。

本結果は、FABP7がグリア瘢痕形成過程の制御を介して、脳の変性疾患や神経外傷過程に深く関与することを示すものである。